My Best Shoegaze Vol.8/鈴木レイヤの5枚

Feature

1991年にリリースされ、シューゲイザーの金字塔を打ち立てたMy Bloody Valentineの2ndアルバム『Loveless』。2021年で30周年を迎える本作を記念し、弊メディアでは「My Best Shoegaze」と題した特集記事を不定期で連載する。SNS上の音楽フリークやライター、さらにはアーティストに至るまで、様々なシューゲイズ・リスナーに各々の思い入れの強い作品を紹介していただく。

Vol.8は、弊メディアでの執筆、及びライターや小説家としても活動する、鈴木レイヤの5枚。

Lilys – Eccsame the Photon Band

Label – spinART
Release – 1994/12/??

My Bloody Valentineの影響を色濃く受けた1stアルバムから一転、よりアコースティックで空間系のサウンドを取り入れた本作。夢想的と称すべき歌詞とヴォーカルとメロディが連なる中で、脳からモノが垂れるほど美味しいノイジーなギターがシンセやビブラフォンがスロウなパーカスと共に腐るまで繰り返される。シューゲイズの根幹にあるのはそのサイケデリックなノイズとポップネスだ。MBVのケヴィン本人が賞賛したKurt Heasleyのシューゲイズ観と、Lilysの後のキャリアを推し進めたメロディーセンスが濃密に共存する本作を聴けば、本作以降様々なジャンルをものにし贋作の王とまで言われたLilysのなんたるか、唯一無二性を理解することができるはずだ。

Drop Nineteens – Delaware

Label – Caroline Records / Hut Records
Release – 1992/06/19

ピストルを握った少女を旗印に短いキャリアを駆け抜けたボストンのシューゲイザー。彼らのリズムにおける遊びは『Souvlaki』期前後のSlowdiveを思わせ、またSwervedriverに見られるようなストーナーロック寄りのグランジ風ギターが垣間見える。Chapterhouseに見出されイギリスで先に火が付いたいきさつには、彼らの持つ風土の違いがあったに違いない。僕が彼らを特別だと思う理由もそこにある、当時のシューゲイズとやっていることは同じに見えてもひとたび場所をたがうと、ここまで印象が変わるのだから面白い。シーンの土壌からジャンルの解釈まで変わる。どこか乾いた熱を帯びたようなものは当時にすると珍しいのではないだろうか。

※現在日本でのサブスクリプション及びbandcampでの配信はされていません。

LSD and the Search for God – LSD and the Search for God

Label – Mind Expansion
Release – 2007/01/16

二本のギターが絡み合いながら立体で渦巻くノイズを作り出していく。一方が柔らかいリヴァーブで波を立て、一方でソリッドに波頭を縁取っていく。Slowdive的なカタルシスへの導線の多用など、後に来るリバイバルを予見するようなバンドでもある。が、最も特筆すべきはその音像のぼやけているにも関わらずビビッドである所だろう。西海岸を中心としたライヴ・シーンに属し、オリジナル世代のシューゲイザーであるTelescopesや実験性の強いスペースロックのFüxaらなどアンダーグラウンドなバンドたちと交友したことで、読んで字のごとくLSDのサイケデリアをシューゲイズ・サウンドに落とし込むことができたのだ。

Ovlov – am

Label – Exploding in Sound
Release – 2013/07/02

コネティカットのインディー・ロック・バンドは正確にはシューゲイズではないのかもしれない。しかし10年代のUSインディー・ロック・シーンにおいて、90年代シューゲイズ・ムーブメントの影響は大きすぎたのだ。彼らのギター・サウンドはDinosaur Jr.のそれと同じように強いディストーションをその音の特徴に寄っているが、楽曲の造りはまるでシューゲイザーとノイズロックの衝突だ。そもそもDinosaur Jr.のサウンドがMy Bloody Valentineに与えた影響を考えれば、それらとシューゲイズの両方に影響を受けたバンドが良質なシューゲイズにならないはずがないのだ。

Kraus – Path

Label – Terrible Records
Release – 2018/03/09

ウィリアム・クラウスはベッドルームにしては大胆すぎる音楽を作り出した。Sigur Rósの初期作品を彷彿とさせるアトモスフェリックな導入から、乱反射するドラムと低音ブーストされたノイズが塗り尽くす劇的な音像。幾重にもなる音の奥で響くヴォーカルは囁きのようでも叫びのようでもある。電子音楽やハードコア、スロウコア、ポストロックなどムーブメント衰退後に接近したジャンルを踏まえることなくして完成しなかった現在シューゲイズの結晶でありながら、音色の腕力はMy Bloody Valentine級、インディー・ロックの爽やさではRideに引けを取らず、同時にSlowdiveのダイナミクスをも併せ持つという正史のど真ん中に位置する作品でもある。

文=鈴木レイヤ(Sleep like a pillow 執筆/駆け出しの小説家)
編集=對馬拓

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