Posted on: 2025年6月6日 Posted by: 鈴木レイヤ Comments: 0

■ なるべく日を跨がない

――EPとアルバムで歌詞の印象は全然違うと思いました。EPは暗いっていうか、少し独り言に近いような感覚。アルバムでは他の人がそこに存在しているような感覚があったんですよね。歌詞を作る上でEPとアルバムの間で変わったことはありましたか?

fuki EPのときはそもそも、曲を作る経験があまりなかったので、やり方もわからなくて――歌のメロもリュウセイくんが持ってきてくれてたし、そこに当てはまるいい言葉を探すので、文字数も限られて――そうなると、どうしても綺麗な文章になっちゃうんですよ。まとまりとして、全体図として見てしまうというか。アルバムでは完全に任せられてたので、逆にすごく自由。ラップしてもいいし、もうずっと「ハー……」でもいいわけだから。今まで綺麗にしようとしてたけど、別に誰も求めてないし、ぐちゃぐちゃでもいいのかな?みたいな。綺麗な文章にすると人物像が消えて、登場人物が薄れていくけど、ごちゃごちゃにすればするほど、部屋の中が見えたり、私が今思ってる人とか、逆に言えば憎い人とか、1つの曲の中でも登場人物が増えてくる。綺麗にしなくなりました。

――cephaloの歌詞は一貫して “僕” が一人称ですが、そこも何かありますか?

fuki リュウセイくんがふとしたときに「“僕” って書いてあるの好きだ」って言ってくれて、嬉しくてずっとそうしてます。

オオマエ 言ったっけ。

fuki 「歌詞だと “僕” って書くよね。それが好き」みたいな。「好きなんだ、じゃあ “僕” にしておくね!」みたいな。

fuki あとは曲調にもよるかな? 「MOON CHILD」とかは優しい曲じゃないですか? だから「ここでこういう人が現れたら嫌だな」って思うから、求めてる人物像は考えました。「MOON CHILD」とか、自分が作った「朝が来る度」とかだったら、すごく達観していて、調子がいいときの自分。散歩してるときとか、気分がいいときの自分が現れた方がいいだろうって。「ていくいっといーじー」だったら、もっとだらしなくて奔放なときの自分。

――cephaloの曲の言葉は、fukiさん自身がレンズになって見た世界が軸になってるんですね。(「ていくいっといーじー」の歌詞を見ながら)これマジでいい歌詞ですよね。

オオマエ ……これほんとすごいです。

――對馬:〈クソ暑いとこ行きたがるバカばっか〉、わかるー。

fuki 「わかるー」って言ってくれる人のために書いてます。

――〈未来から来たギャル〉ってなんですか?

fuki そのとき、多分コギャルのYouTube(*3)を観てて……ギャルってすごい未来的だなって。コギャルだから小学生がギャルしてるんですけど、ずっと未来的だなって……思っただけです。

*3:https://www.youtube.com/@kogyaruofficial

―― この曲ほんと好きです。

オオマエ 特にいいですね。みんな気に入ってる。

fuki 嬉しい。

――オオマエさんはfukiさんの書く歌詞をどんなふうに思ってますか?

オオマエ 直接的な表現はあんまり出さずに、でも伝わってくるような歌詞で。fukiちゃんが書く歌詞は……すごい好きですね。

――歌詞はどういうときに書くことが多いですか?

fuki 昔、ドミコの坂下さんが番組内で曲を作る、みたいなことをやってて。とりあえずギターに合わせていいメロディを英語っぽく歌って、それを後から日本語にする、っていうのを観たんですよね。私も歌詞を先に書くことはなくて、送られてきたものに対して歌詞とかメロディを考えるから、同じように英語っぽく、適当にアカサタナみたいな感じで歌っておいて、それに後から当てはめていく。 だからメロと歌詞を同時に作っていくので、書き止めたりとかはしないですね。

――そのとき頭の中には、景色が浮かんでるんですか? それとも文字とかメロディみたいに記号化されてますか?

fuki 景色だと思います。だから何も浮かばない日もあるし。「今日は言いたいことない」みたいな。

――日を跨いだら雰囲気が変わったりしますよね。

fuki 変わっちゃうので、なるべく日を跨がないようにしてます。

――1日で1曲全部?

fuki 1日で作りますね。でも「MOON CHILD」は1日跨いじゃったんですよ。みんなで一緒に作った曲だったので、最後にもう1回歌詞を持ってこようとか、サビを持ってこようとか、後から入る追加要素があったから。そこは別の日に書いたんですけど、やっぱり展開とか結末が変わってしまうのもあって。それが良い作用か悪い作用かは、 いい意味でどうでもいいとも思ったんですけど。でもなるべく1日で伝えたいです。

――他のメンバーの意見で歌詞が変わることもありますか?

オオマエ 何も言わないです。

――“トポロジー” とか “対温度” とか、理系っぽい難しい言葉が時々入ってたりしてるんですけど、そういうのはどこから着想を得たんでしょうか?

fuki 全部漫画だと思います。ちゃんと意味は調べてます!

オオマエ “トポロジー” は「なつやすみおわる!」ですね。これもいいよね。

fuki 「私にしかできないことって何だろう?」って考えたときに、歌詞はそうだと思って。本当に全力でムキになって、誰も私の世界に入れさせないようにかなり強気で作ってます。

――自分だけの世界を作ってるっていう?

fuki 家の中で書いてるときは、本当に誰も、宅配の人も、お母さんも、入ってくるな!という気持ちで書いてますよ。私も大した人間じゃないけど、そのときだけ「来るなー!」っていう。そういう気持ちじゃないと伝わらないのかなと思います。

■ 机に張り付いて、ずっとギターを触ってる

――アルバムの制作に向き合ってた期間で印象的だった風景、生活の思い出のようなものってあったりしますか?

fuki 「なつやすみおわる!」のときは、ずーっと電車に乗ってて、全部メロディも電車で考えてて。側から見たら気持ち悪い人だったと思うんですけど、ずっと口パクしながら考えてましたね。そのときは家にいたらもう何も思い浮かばなくて、とにかく移り変わる窓を見たかったので――それで電車で曲作りしようって。

――どこか目的地があって?

fuki いや、目的地はなかったと思います。ぐるぐる。自宅からどこか適当なところへ。疾走感のある曲だから、それが車窓の景色とリンクしていったので……家のなかだったら作れてなかった気がします。

オオマエ いい話ですね。

――オオマエさんはありますか?

オオマエ いや……特にないかもしれない。無我夢中になって作ってたので。

――夜に部屋のテーブルの前に座って夢中で、っていう感じが多いんですか?

オオマエ そうですね。机に張り付いて、ずっとギターを触ってる。今もそんな生活。仕事から帰ってきて、すぐにギター弾いて、朝まで。そのまま仕事に行ったりしてましたね。

――エナジードリンクとかコーヒーも飲みながら?

オオマエ いや、飲んでなかったです。

fuki だからガリガリなんです。

オオマエ 関係ない関係ない。

fuki あるでしょ! 心配になるんです。

オオマエ 大丈夫です。ちゃんと食べてます!

■ こんなに自分勝手になれるものはない

――お互いどこか距離があるけど、信頼しあってる関係性が不思議ですね。今後の活動はどうしていこうと思ってますか?

fuki 新譜を作りたいねって。

――どんなものを作ろうっていうのを、言える範囲で。

fuki かっこいいよね? 特にリリース・パーティー(*4)をやったときに、熱が足りてないのが浮き彫りになって。バンドって生き物だからコミュニケーションが本当に大事なんだなと思いました。 練習不足とかもあったけど、熱意というか、お互いにコミュニケーションを取って、熱のない曲でも熱を出していくことが大事だなって。

*4:2025年1月26日 cephalo 1st Album “Fluorite code” Release Party @下北沢BASEMENT BAR

オオマエ そうだね。

fuki 熱意がなかったわけじゃないけど出し損ねた、みたいな。

オオマエ 出し損ねたし足りなかった部分もある。

fuki 最近出たシンクロニシティとかは、みんなかなり熱を持ってライブできてたから、多少の失敗はあれど「最高にいいライブだったね」って。で、何か掴んできたなってところです。だから、そういうときに熱くなれる曲を作った方がいいっていう。

――熱っていうのは演奏面で?

fuki 気持ちが入るような曲ですね。照れとかも出ちゃうので。

――4人の間でも照れがある?

fuki はい。歌とかでもやっぱり照れちゃうんですよね。みんなの前で動いたら恥ずかしいとか全然あったし。奔放に見えるけど、私以外みんな年上の男性だし、ちょっと緊張したり、照れちゃったりします。みんなもあんまり動いたりとかしなかったし。

オオマエ ただ演奏するだけ、っていう感じになっちゃって。

fuki それが次の課題だと思います。

オオマエ ライブはライブでしかできないことをやりたいなっていう。最近は殻がちょっと破けた感じはありますね。

fuki 突破してます!

――今後のテーマは熱。

fuki 熱ですね。

――では、最後の質問です。音楽は楽しいですか?

オオマエ 楽しいです。

fuki めちゃくちゃ楽しい。こんなに自分勝手になれるものはないです。自分勝手になったら怒られる世の中だけど、音楽だけが許されるところだから。ありがたいです。

――cephaloは本当に感情的な音楽なんですね。

オオマエ 割とそうかもしれない。

――あんまりものは言わないけど、

オオマエ 思ってることはみんなたくさんある。

fuki うん。でも伝わらなくてもいいなって思ってます。

オオマエ そっか……。

◯ 2025年4月29日 下北沢某所にて

■ Release

cephalo – Fluorite code

□ レーベル:KOKOO RECORDS
□ 仕様:CD / Digital
□ リリース:2024/12/18

□ トラックリスト:
1. 時化空
2. なつやすみおわる!
3. ていくいっといーじー
4. MOON CHILD
5. unnamed planet
6. ルート225
7. 朝が来る度
8. midori

*配信リンク:
https://linkco.re/mgHZmyX4

■ Event

nevv you Act.07
almost fading classroom

日程:2025/06/08 (sun)
会場:下北沢 THREE
時間:open 18:15 / start 18:45

[act]
溶けない名前
cephalo
dansa med dig
零度pool

[DJ]
aro
taku tsushima

[food]
goseki_tandoori chicken

[ticket]
一般:¥3,400 (+1drink)
U-22 Discount:¥2,400 (+1drink)
https://tiget.net/events/388569

cephalo pre. “from dawn”

日程:2025/07/06 (sun)
会場:渋谷 TOKIO TOKYO
時間:open 17:30 / start 18:00

[act]
cephalo
downt
THEティバ

[ticket]
Adv ¥3,400 / Door ¥3,900(+1drink)
U-20 Dsicount:¥1,900(+1drink)
https://t.livepocket.jp/e/fromdawn

■ Profile

cephalo

fuki(Vo. Gt.)、オオマエ(Gt.)、オオタキ(Ba.)、ウチダ(Dr.)からなる4人組バンド。インディー・ロックを基調とした緊張感のあるサウンドに、fukiの独特な世界観の歌詞や透き通った歌声、キャッチーなメロディが溶け込む。

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Author

鈴木レイヤ
鈴木レイヤReiya Suzuki
愛媛県新居浜市大生院出身、タイ王国国立カセサート大学卒業。小説家。主に若者の鮮やかな夢について、魂のこもった熱い人間とその作品について書いています。東京ヤクルトスワローズのファン。