1991年にリリースされ、シューゲイザーの金字塔を打ち立てたMy Bloody Valentineの2ndアルバム『Loveless』。2021年11月でリリース30周年を迎えた本作を記念し、弊メディアでは「My Best Shoegaze」と題した特集記事を展開。これまで様々なリスナーを招き、各々が思うシューゲイザーの作品を5枚選んで公開してきたが、好評につき今後も不定期で更新していく。
【Feature】My Best Shoegaze
Vol.15は、3月に新作EPをリリースした4人組シューゲイザー/ドリームポップ・バンド、re:lapseのseisuiが選ぶ5枚。
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■ The Jesus and Mary Chain – Psychocandy(1985)
Label – Blanco y Negro
Release – 1985/11/18
ジザメリで一番好きなアルバムは『Darklands』ですが、「My Best Shoegaze」で挙げるとするとやはり『Psychocandy』です。『Loveless』を聴いた時はピンとこなかったのですが、このアルバムを聴いてからはその魅力を理解できるようになりました。名曲「Just Like Honey」は何度でも聴いてしまいます。パンク的な凶暴さを持ち合わせながらもThe Ronettes「Be My Baby」の影響など60年代の甘いポップ・ソングを独自の解釈で構築し混ぜ合わせているところが素晴らしく、僕自身のバンドでもそうしたジザメリのスタンスにシューゲイズ・バンドの中でも特に影響を受けています。
■ My Bloody Valentine – ep’s 1988-1991(2012)
Label – Sony(Reissue:Domino)
Release – 2012/05/04
名盤と名高い『Loveless』を聴いてみた時は全然良さが分からなかったのですが、Creationの古いコンピに「Don’t Ask Why」が入っていて、その曲が初めて「マイブラいいな…」と思うきっかけとなりました。一時期そのコンピの中でこの曲だけ毎朝聴いて目覚めるのがいつの間にか習慣になっていました。朝の目覚めの微睡でぜひ聴いてみてほしいです。トリップできます。マイブラはアルバム曲も素晴らしいですが、EPも「Moon Song」「Sugar」「Angel」など飛び抜けてポップな楽曲が多く、僕としてはマイブラのそうした側面が出ているポップ・ソングが一番ツボなので、それらの貴重な楽曲が聴けるこの盤をチョイスしました。
■ Ride – Today Forever(1991)
Label – Creation
Release – 1991/03/04
通称「鮫ライド」。正直、シューゲイザーへの理解はRide「Vapour Trail」を聴かなければ放棄していました…笑。ですので『Nowhere』と迷いましたが、アートワークを含めEP全体の世界観が統一されていて一番好きな盤なのでチョイスしました。特にEPの最後を締め括る「Today」はラストにかけてストリングスと絡みながらバンド・サウンド全体が暴走してゆく様が、狂気的でありながら美しく素晴らしいです。最後、一気にフェードアウトしてスパッと終わるところも潔く、聴き終えた後にスッキリとした気持ちになります。この盤までの初期Rideのアートワークは本当に美しく、音像の爽やかで儚い様を具現化しているように思います。
■ Enya – And Winter Came…(2008)
Label – Warner Brothers / Reprise
Release – 2008/11/07
個人的に、シューゲイズ的なヴォーカルの極地がEnyaだと思っています。アイルランド出身というのもあって民族音楽的要素もマイブラと近い部分を感じることが多々あり、完璧主義者であるところもケヴィン・シールズと共通しています。ヴォーカルについても何十回、何百回と多重録音しており、実はマイブラ以上に狂気的な作品作りをしているところも。Enyaの楽曲には捨て曲が一切ないのでどれか一枚を選べませんが、Enyaにハマるきっかけとして思い入れのあるドラマ『ありふれた奇跡』(主演は加瀬亮と仲間由紀恵)の主題歌として象徴的に使われていた「Dreams Are More Precious」が収録されているこの盤をチョイスしました。
■ James Blake – James Blake(2011)
Label – ATLAS / A&M / Polydor
Release – 2011/02/04
ダブステップのアルバムですが、シューゲイズ的なアンビエント要素も感じ取れて、僕にとっては直近のアーティストの中で一番影響を受けたアルバムです(2011年の作品ですが…)。アルバムで聴ける加工された不可思議な音はほとんどLogic Proのプラグインによるもの、ということを雑誌のインタビューで知り、僕自身もそれをギター・サウンドの作り方に落とし込むなど非常に影響を受けました。『Loveless』のリヴァース・リヴァーブやサンプリング、Enya作品のデジタルMTRにより可能になった何百もの多重録音もそうですが、新しさを感じる音楽というものはテクノロジーの進化と非常に密接に関係しているのだなと最近は常々思っています。
文=seisui(re:lapse)
編集=對馬拓
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■ Release
re:lapse – re:lapseⅡ.ep
□ Label – DREAMWAVES RECORDS
□ Release – 2022/03/16
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