Posted on: 2022年3月22日 Posted by: 對馬拓 Comments: 0

再生した途端、瞬時に心を掴まれるコーラス、流麗なアンサンブル。3月2日にリリースされたFerri-Chromeの1stフルアルバム『Dazzling Azure』から放たれる音像は、どこまでも柔らかく、包み込むように優しい。

Sunnycharの元メンバーで、現在もShortcut Miffy!やMica Flakesで活動するギター・ポップ・シーンの重要人物、クロゴメを中心に結成されたFerri-Chromeは、2020年にデビュー・ミニアルバム『from a window』をリリース。シューゲイザー・ファンを中心に注目を集めた。

あれから2年。ついに届けられたフルアルバム『Dazzling Azure』は、クロゴメ自身のルーツであるシューゲイザーやギター・ポップ、特にRideやPale Saintsに強く影響を受けた、まばゆいサウンドがありったけ詰め込まれている。美しいメロディやコーラス、揺らめくような音像、繊細さの中から時折顔を出す凶暴さ。どの瞬間も素晴らしい。

今回は、そんなアルバムを紐解くため、クロゴメとエウレカにインタビューを敢行した。紺碧の空と海の狭間に架かる大きな橋は、90年代への憧憬を現代に繋ぐ──。

インタビュー/文=對馬拓
写真=DAN, Kohei Yamashita

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■ 友人と飲んでたら、U-1くんとエウレカさんがその場に参加してくれて

── アルバムの完成、おめでとうございます。まず、完成して率直にどんな心境でしょうか?

クロゴメ:非常に気に入っています。エウレカさんが加入してから2年くらい経って(『from a window』制作時は前メンバー、Sanaeが在籍していた)、バンドの方向性もまとまりつつありますし、自分の理想通りのアルバムが出来上がったと思います。

エウレカ:私はバンド経験としてはFor Tracy Hyde(以下、フォトハイ)が初めてで、2つ目のバンドがFerri-Chromeなんですけど、まず音源の作り方が全く違ってて。フォトハイはデモが作り込んだ状態で来るのに対して、Ferri-Chromeはなんとなく弾き語ったものを(クロゴメさんに)送ってもらってみんなで作っていく…みたいな流れなので、自分が考えたコーラスとかがアルバムに反映されて作品になってるのが感無量です。

── フォトハイとはデモの時点でかなり違ってるんですね。

エウレカ:フォトハイも、もちろん受動的っていうわけではなくて色々考えて音とか声を作ったりしてるんですけど、より能動的というか。その結果が1枚のアルバムになってるのが嬉しいですね。

── では、Ferri-Chrome結成の経緯について改めてお伺いしたいと思います。クロゴメさんは様々なバンドを歴任し、今でも複数のバンドで活躍されているかと思いますが、Ferri-Chromeはシューゲイザーをやりたくて始めたプロジェクトなのでしょうか?

クロゴメ:シューゲイザーを始めたいというよりは、どちらかというとその一部、例えば僕が昔から常に影響を受けているRideとかPale Saintsの要素を全面に出したバンドをやりたいな、と思って始めました。これまでやってきたバンドもそういった要素は入ってたと思うんですけど、両者のメロディの良さとか声の良さとかキラキラした感じとか、そういったところをより一層出したいなと思って。なので、シューゲイザーって結構幅が広いと思うんですけど、My Bloody ValentineとかSlowdiveとか、ああいった感じとはちょっと違うかなと。シューゲイザーの一部のバンドからの良い影響を出しつつも、完全にシューゲイザー・バンドにするっていう感じにはしたくなかったですね。

── 元々他のバンドにもあったシューゲイザーの要素を、より強く出していくスタンスなんですね。

クロゴメ:そうですね。おそらく今までやってきたバンドの中で一番強いと思います。

── メンバーはどのように集まったのでしょうか?

クロゴメ:僕は転勤族なんですけど、神戸から東京に転勤になってちょっと落ち着いた頃、自分がヴォーカルのバンドをまたやりたいなと思って、軽く(その旨を)Twitterで呟いたんです。ただ、僕は常に女性のコーラスとギターを入れてやりたくて、それが僕の声とも合うと思ってるんですけど、イワサワくん(Gt.)が勘違いして応募してきまして。笑 本人は自分がコーラスもやると思って応募してくれたようなんですけど、「実はコーラスは女性にしたいんだ」と伝えて。でも、イワサワくんとは昔から付き合いがあるし、彼のギターはすごく好きなので、「リードギター、どう?」って聞いたら「やってみます」ってことになりました。ツチヤくん(Dr.)は、SunnycharとかCactus Flowerで昔から一緒にやってるので、二つ返事でOKになりましたね。

Haruhisa Tsushiya(Dr.)

クロゴメ:エウレカさんについては、前のコーラスの方が脱退して、しばらく不在の状態が続いたんですけど、ある日たまたま友人に「今日フォトハイのライブが銀座であるので来ない?」って言われて、仕事帰りに観に行ったんですね。で、終わった後その友人と飲んでたら、U-1くん(当時はフォトハイに在籍、2022年1月末で脱退)とエウレカさんがその場に参加してくれて。それで「実は今コーラスがいないんだよね」って話をしたら、エウレカさんが興味を示してくれて。「サイド・ギターとコーラスをやるバンドもやってみたいと思ってた」って言ってくれて、これは…!と。笑

── そんな経緯が…!

クロゴメ:それで後日スタジオで合わせたら問題なかったので、そのまま加入してもらって。それが2年続いてます。

── まさか飲みの席でそんなご縁があったとは。

クロゴメ/エウレカ:笑

クロゴメ:新橋の「まこちゃん」っていう焼き鳥屋で飲みながら加入が決まりました。笑 だからその友人…LOVE LOVE STRAWのスタッフの松下くんなんですけど、非常に感謝しております。

── エウレカさんは以前からサイド・ギターとコーラスをやってみたいという願望があったんですね。

エウレカ:そうですね。今まではずっとメイン・ヴォーカルをやってきて、歌に集中していた部分があったので。自分の好きな曲も、男性のメイン・ヴォーカルと女性コーラスのツイン・ヴォーカルが多くて、やってみたい!という。

── フォトハイでは3rdアルバム『New Young City』からエウレカさんもギターを弾いてると思うんですけど、そのことがそうした願望に繋がってるという側面もあったりしますか?

エウレカ:もうギターのことは何も分からない状態で(3rdから)始めてるんですけど、やっていくうちにギターも楽しいなって思い始めて。その延長で、もっとギターも上手くなりたいと思ったし、コーラスをやったりすることで色々広げていきたいっていう気持ちはあったんだと思います。

── そう考えると、タイミングが上手くかっちりとハマった感じがしますね。

エウレカ:ですね。ありがたい。笑

クロゴメ:こちらとしてもありがたい!笑 エウレカさんの音の作り方も非常に好きだし、ギター歴が浅いようには見えなくて。今作のキラキラした感じはエウレカさんのギターの音作りもかなり反映されてまして、とても良いギターを弾いてもらってます。

エウレカ:ありがとうございます…!笑

■ 曲の舞台は、いつも釣りをしていた明石海峡大橋の袂なんです

──『Dazzling Azure』の制作は、どういったところからスタートしたのでしょうか。

クロゴメ:曲をちょっとずつ溜めていって7曲くらい出来上がった時に、このメンバーで(アルバムを)作りたいなと思って。ただ、10曲くらいは欲しかったので、コーラスが前の方だった『from a window』の3曲をエウレカさんの声で録り直して入れました。今回はスタジオも含め、ミックス、マスタリングも完全に変えてやってます。

── エウレカさんが加入してメンバーも固まったところで、「新しいスタートを切る」といったニュアンスもあったのでしょうか。

クロゴメ:そうですね。エウレカさんが入ったものの、コロナの影響でほとんど活動できていない状態でしたが、スタジオで合わせるうちに(バンドの状態が)非常に良くなっていったので、この4人で(作品を)残したいと思ってアルバムの制作に入った次第です。

── 今作はミックスとマスタリングを完全に変えたということですが、こだわった部分などはありますか?

クロゴメ:ミックスに関しては、前作は「いわゆるシューゲイザーっぽい感じにしたい」っていう思いがあって、割と前面に楽器が出てくる曲が多くて。実はヴォーカルにもエフェクトをかけて軽く歪ませて、少し前に出るような感じにはしてて、あまり生音が出てない感じだったんですね。出てはいるんですけど、ちょっと歪ませてる。

Yoshiki Iwasawa(Gt.)

クロゴメ:でも今回はどちらかというと、生音が綺麗に出るようなミックスをお願いしました。あとは、ギターが突出して前に出すぎないように、全体のバランス感も意識してます。イワサワくんが「アナログ感の良さがありますよね」と言ってたんですけど、確かにそうだよなと。「生の感じ」があるのかなと思います。(ミックスを担当した)岩田さんは昔からお世話になってますし、フォトハイも手掛けてるので、意思の疎通も非常にすんなりいきました。マスタリングについてもいっぱいやり直してくれて、良い作品になりましたね。

── 音源を聴いて、全体的にとても柔らかいサウンドだという印象を抱いていたのですが、そういう「アナログ感」が起因しているように感じますね。

クロゴメ:仰る通り、柔らかめの音を意識してます。特にこの辺はイワサワくんが技術的にもかなり詳しいので、彼のアドバイスは参考になりました。

── 本当に良い音像ですよね。もちろんシューゲイザーが好きな方にも響くと思うんですけど、それ以外のファンにも刺さるものになっている気がします。

クロゴメ:「シューゲイザー」って言われるのは全然嫌いじゃないしむしろ好きなんですど、より広いリスナーの方に聴いていただけたら良いなと思ってます。J-POPとかが好きな方でも聴けるんじゃないかと思ってるので、広まっていったら良いですね。

──『Dazzling Azure』というタイトルですが、「dazzling」は「眩しい」「まばゆい」、「azure」は「青空」「紺碧」といった意味ですよね。アルバムの音像を的確に表現していて、とても素敵だなと感じました。

クロゴメ:ありがとうございます。

── このタイトルはどうやって付けたのでしょうか?

クロゴメ:以前関西にいた時、海と空と島が広がってる瀬戸内海の光景がすごく好きで。その空がまさに「まばゆい紺碧」みたいな感じだったんですね。それで、そのイメージで曲を作りたいと思って、アルバムと同名の「Dazzling Azure」という曲を作りました。曲の舞台は、いつも釣りをしていた明石海峡大橋の袂なんです。歌詞にも“The sky seen next to the bridge is dazzling azure.”っていうフレーズもあって、その「dazzling azure」っていう響きが非常に良かったので、アルバムのタイトルにも付けました。なので、ジャケットも友人に撮ってもらった明石海峡大橋にしております。

『Dazzling Azure』ジャケット

── 舞台は瀬戸内海だったんですね。そして、表題曲である「Dazzling Azure」からアルバムが広がっていった、と。

クロゴメ:「まばゆい」という言葉が曲のイメージにもピッタリだったので、そのままタイトルにも使いました。

── 響きも良いですし、ジャケット自体も海の風景というところで、それこそRideに通ずるものがありますよね。

クロゴメ:1st(『Nowhere』)が「波ライド」ですからね。裏のジャケットも明石海峡大橋なんですけど、曲名の載せ方とかをRideのオマージュにしてます。

Ride『Nowhere』裏ジャケット

Ferri-Chrome『Dazzling Azure』裏ジャケット(筆者撮影)

── あ…ほんとですね!

クロゴメ:最高ですよね。

── RideとPale Saintsの話が何度か出てきましたが、やはりその2つのバンドがキーになってくるのかなと思いまして。というのも、実際に音源を聴くと、クロゴメさんのヴォーカルはマーク・ガードナー(Ride)とイアン・マスターズ(Pale Saints)を混ぜ合わせたハイブリッド、みたいな印象を受けたんですよね。

クロゴメ:ありがとうございます。笑

── その辺って、かなり意識的にやってらっしゃるのかなと思ったのですが、どうでしょうか?

クロゴメ:意識はしてますね。僕はイアン・マスターズの声が世界で一番好きで、ああいう歌い方をしたいなと思っていて。バンドによって歌い方は変えてるんですけど、特にFerri-Chromeは良い意味で力を入れずに、平坦な感じで歌うようにしてます。そうすると自分の声質的にもちょうど良い感じになりますし、マークとかイアンの…自分で言うのもなんですが澄んだような声が出るので、そんな感じで歌ってます。たまに「マークに似てる」と言われることはありますね。笑

── 実際、すごく似てると思います。

クロゴメ:嬉しいです。

── クロゴメさんのヴォーカルは、柔らかくて優しい、包み込むようなイメージもあるんですよね。

クロゴメ:包み込む…初めて言われたな。

── 優しく耳を包み込んでくる感じというか。ミックスも柔らかめを意識したとのことでしたが、そのサウンドともすごくマッチしてます。

クロゴメ:柔らかさは、本当に意識しながら歌ってますね。特にレコーディングの際は、柔らかく声が出るような歌い方をしています。Shortcut Miffy!ではコーラスをやってるんですけど、そっちは割と力強く声量を出すような感じなので、歌い方は全然違いますね。バンドの色に合わせてます。

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中学と高校で合唱部に入ってて、当時は聖歌とかを歌ってたんですよ

Author

對馬拓
對馬拓Taku Tsushima
Sleep like a pillow主宰。札幌出身。音楽ブログの運営やディスクユニオンのスタッフなどを経て、現在はライター/編集者が本業。主な実績は、揺らぎ、SPOOL、pollyなどへのインタビュー、Tapeworms『Funtastic』CDライナー執筆など。座右の銘は「果報は寝て待て」。