Posted on: 2022年5月14日 Posted by: 對馬拓 Comments: 0

突き刺さった。90年代のオリジナル・シューゲイザーへの直接的なリスペクトを込めつつ、それでいてオルタナティヴでオリジナリティのある音像。これはちょっといけない。加えてサウンドのみならず、アートワークやデザインといったヴィジュアルの面でもしっかりとシューゲイズを体現しており、オリジネイターの継承/アップデートを優れた形で提示しているのだ。

東京を拠点に活動する4人組、re:lapse(リラプス)。去る3月16日、DREAMWAVES RECORDSから2nd EP『re:lapseⅡ.ep』をリリースした彼らは一体何者なのか、そしてこのサウンドはいかにして生まれたのか。それを少しでも解き明かすべく、バンドの結成から、For Tracy Hyde/エイプリルブルーの菅梓(夏bot)がシンセ・アレンジで参加した1st EP『re:lapse.ep』、そしてその対となる2nd EPに至るまでの道のりについて、メンバー全員に話を聞いた。

なお、同日に敢行したバンドのブレーンであるseisui(Vo. Gt.)のソロインタビューは、現在準備中のZINE『Pygmalion』に収録予定。そちらも是非ご覧いただきたい。

インタビュー/文=對馬拓
写真=Ryo Shimada/Iwata Koichirou

* * *

■ シンセのアレンジ次第でこんなに音の芯が通るのか!って

── re:lapseはどういった経緯でスタートしたバンドなのでしょうか?

seisui(Vo. Gt.):僕は元々ソロに近い形で前身のバンドをやってたんですけど、メンバーが離散しちゃったので、2019年の秋くらいにネットでメンバーを募集しまして。それでyokoyamaくんは友達だったので入ってくれて、ドラムは募集したらmarcieくんが来てくれたんです。しかもmarcieくんは「なんか見たことある人だな」と思ったら、For Tracy Hyde(以下、フォトハイ)の元ドラマーで。

marcie(Dr.):実は『he(r)art』(2017)までフォトハイにいたんですよ。

seisui:それで二人とスタジオに入って合わせてみたんですけど、やっぱり女性ヴォーカルがいた方がいいと思って、改めて募集したらkurageさんが加入してくれて。それで、2019年の11月くらいに一度モナレコ(mona records)でライブをやったんです。その時はmabatakiっていう名義で。ただ、僕としては「今までの曲を変えてしまいたい」という思いがあったので、モナレコのライブは後にre:lapseのレパートリーになる曲しかやらなかったんですよ。2nd EPに入ってる「wagon」はmabataki時代からある曲だったりします。kurageさんとmarcieくんは、どうして加入の時にmabatakiの曲を気に入ってくれたの?

marcie:単純に好みだったし、「これだったら一緒にやりたい」って思ったから加入しました。今でもmabataki時代の音源を世に出してないのはもったいないと思ってます。

kurage(Vo. Ba.):私は当時いくつか加入候補のバンドがあったんですけど、その中で一番良かったので入りました。

── 無事に選抜をかいくぐったわけですね。

seisui:それでメンバーが決まって、モナレコのライブの後にすぐre:lapseに改名したんですけど、それが2020年の頭くらいだったと思います。

──「re:lapse」というバンド名の由来は?

seisui:僕がみんなからバンド名を募ったんですけど、kurageさんが出してくれた「ラプス(lapse)」って言葉が、なんかいいなって思って。でも、検索のことを考えるとmabatakiはかなり分かりにくかったのもあって、より分かりやすくするために「re」を付けました。特に意味は意識してなかったんですけど、(主に悪い意味で)「再発」っていう意味らしくて、良くも悪くも「再発」なのかなと。響きも良いし。『東京喰種:re』ってあるじゃないですか。なんか「re」ってかっこいいなと思って。笑

一同:笑

kurage:でも改名してからすぐコロナが流行って、一年くらい何もできなかったよね?

seisui:うん。2020年の3月に一応レコーディングはしてたんですよ。でもコロナ禍になっちゃって。その時1st EPの曲を録ってたんですけど、ライブができない状況だったので、自分たちで動画を撮ったりして、それをライブの代わりにYouTubeで配信したりしてました。

seisui(Vo. Gt.)photo by Iwata Koichirou

seisui:あと、その後もコロナで動けなかったので録った音源を僕がひたすらいじくり回してたんですけど、その年の秋くらいになって「いい加減サブスクとかで音源を出すだけ出そう」ってなって。それで自分たちでミックスを進めてたら、yokoyamaくんが音割れを発見して、やっぱりなんとなくじゃなくて、もっとちゃんと作り込んだ方がいいのかな…って思って。それで、For Tracy Hydeやエイプリルブルーで活動している夏bot(菅梓)さんがmabatakiのライブに来てくれた際に、すごくいいアドバイスをもらったりしていたのもあったので、是非1st EPのシンセ・アレンジをしていただきたい、と思って依頼した経緯がありましたね。

── となると、夏botさんの存在はかなり大きいですね。

seisui:そうなんですよ。シンセのアレンジ次第でこんなに音の芯が通るのか!って気づかせていただいて、その経験が次の2nd EPにも活かされましたね。

marcie:アレンジといえば、ゴリゴリのシューゲイザー路線でいくのか、それともポップな路線にするのかっていうのは、常にせめぎ合いがありますよね。

seisui:そこは常に模索してるかもしれないです。

── 2nd EPは、1stに比べるとポップ寄りになりましたよね。

seisui:そこはかなり意識しました。

── 制作のスタイルとしては、基本的にseisuiさんがデモを持ってくるのでしょうか?

seisui:そうですね。事前に僕が打ち込んだデモを聴いてもらった上で、スタジオに集まってみんなで合わせて作っていきます。mabataki時代の曲に関しては、kurageさんが歌いやすいようにメロディをリメイクしたり、歌詞も日本語から英語に変えたりしてます。「f」のドラムは、デモの段階ではシンプルなものしか入れてなかったので、marcieくんが上手いこと生のドラムに落とし込んでくれたり。

marcie:でも、まず打ち込みの状態のデモを聴くんですけど…なんか、あんまりよく分かんないんですよね。笑

seisui:そう、みんなに「よく分かんない」って言われる。笑

一同:笑

seisui:民族音楽みたいな音とかシンセとかをめちゃくちゃ入れまくって、それでギターのノイズも入ってる、みたいなデモだったりするので。

kurage:ヴォーカルでさえ何を歌ってるのか分からない、みたいなデモが来ます。笑

yokoyama(Gt.):それをみんなで分析というか、解読して。

seisui:当初は僕がノイジーなサウンドにハマってたのもあって、そういうデモになってたかもしれないです。

kurage:でも最近は弾き語りになったよね。ギターと歌だけ。

seisui:特に2nd EPはmabatakiのリメイクが多いからね。

──「wagon」以外だと、どの曲がリメイクなのでしょうか?

seisui:「tonight, tonight, tonight」と「hello」がそうです。「timeless melody」はメンバーがいなくなった空白期間に作った曲ですね。

── ちなみに「wagon」というタイトルは、Teenage Fanclubのオマージュでしょうか?

seisui:そうです。『Bandwagonesque』からです。

── 確かに「timeless melody」のドラムも、The Jesus and Mary Chainの「Just Like Honey」のオマージュですもんね。

seisui:もう2ndはオマージュづくしですね。

── でも単なる模倣で終わるのではなくて、ちゃんと新しい鳴らし方ができていると感じました。

seisui:ありがとうございます。そこは上手く落とし込めたと思います。

■ 平静を装ってるんですけど、内面的に忙しい

── 新しい鳴らし方、というところの裏側に迫るためにお聞きしたいのですが、制作を進める上で、それぞれのパートでこだわった部分はありますか?

seisui:yokoyamaくんは? ギターのスパイスとか。

yokoyama:うーん、ないですね…。

一同:笑

kurage:ベースはこだわりがあるんじゃない?

seisui:そうだよね。ベースもyokoyamaくんが考えてくれてるんですよ。ポール・マッカートニー並に動くベース・ラインだから、こだわりがあるんじゃないかと。

yokoyama:1st EPはルート弾きの曲が多いです。ただ、僕はコードが移り変わる時にオブリガード(助奏)を入れるのが好きなので、そういう遊びを意識して「f」もオブリガードを入れてます。2nd EPもオブリガードが次のコードのルートに繋がるのを意識していて、そういうフレーズがたくさん入ってますね。デモの段階で、ベースを含めてseisuiさんがほとんどのオケを作ってくるので、コード自体はその時点で大体決まってるんですけど、ちょっと変えたりはしてます。ギターは、もうノリで。

一同:笑

seisui:yokoyamaくんのベースのおかげで、シューゲイザーによくある「ルート音だけ弾いてる」みたいな感じよりは聴きやすくなってる気がします。僕自身も「2〜3分の短いポップ・ソングをシューゲイザーで鳴らす」という感覚があるので、そこがyokoyamaくんのベースと上手いこと合ってるのかなと思いますね。

── re:lapseはツイン・ヴォーカルにもこだわっている印象があるのですが、ギターだけではなく「声を重ねる」という部分にもこだわりがあったりするのでしょうか?

seisui:最初に日本のシューゲイザー・シーンに興味を持ったのが17歳とベルリンの壁とか死んだ僕の彼女だったので、その辺りの男女ツイン・ヴォーカルからの影響はあるかもしれないですね。あとは、kurageさんがいる花束とカーテンとか。

kurage:ヴォーカルのこだわりとしては、色が極力つかないように、何も考えないで淡々と歌ってます。

seisui:それこそ、花束とカーテンを聴いた時にそういう淡々としたところがすごくいいなと思ったので、re:lapseで歌ってもらう時はそういう風になるように、ヴォーカルの感じはkurageさんを意識して作ってたりしてますね。最初はkurageさんのキーと合わせるのが難しかったです。

kurage:苦戦したね〜。あとseisuiさんの作るメロディはロングトーンが多いので難しいし、mabatakiの曲はめちゃくちゃキーが高かった。今はだいぶ低くなったけど。

seisui:歌いやすいところがどの辺なのか毎回確認してキーを調整してます。

kurage(Vo. Ba.)photo by Iwata Koichirou

── re:lapseの音楽って、鳴らす側の人間性がいい意味で分からないと思っていて。淡々としている分、顔が見えてこないんですよ。個人的にはそれがとてもいいなと思います。

seisui:感情的というよりは、淡々と落ち着いた感じを意識してます。The La’sのリー・メイヴァースが、何かのインタビューで「悲しい時でもハッピーな時でも聴きたいと思えるような曲が作りたい」って言ってて、なるほどなって。ポップ・ソング的な感じではありつつ、重すぎないし軽すぎない、平熱っぽい塩梅はすごく意識してますね。

──「平熱っぽい」っていうのはとても分かります。re:lapseは全体的にも淡々と流れていくような雰囲気があって、個人的にはMy Bloody Valentineの『m b v』のテンションと近しいものを感じたんですよね。そういうシューゲイザー・バンドって、特に日本だとあんまりいない印象があります。

seisui:ありがとうございます。確かに僕も『m b v』のイメージが理想に近いかもしれません。Lovesliescrushingみたいに『Loveless』よりも淡々としてて、ミニマルで平熱な感じを意識して作ってますね。あと、僕自身は騒がしいよりも心安らいでいたいので、落ち着いて聴ける感じにしたいなと。

kurage:seisuiさんって平静を装ってるんですけど、内面的に忙しい人ですよね。笑

seisui:うん、マジですごいことになってるよ。あらゆることをずっと考えてる。笑

一同:笑

── 僕とタイプが近いかもしれないです。笑 ただ、普段そういう風に表に出さないなら、音楽で爆発させるアウトプットの方法もあるわけじゃないですか。でもseisuiさんの場合は音楽でもフラットでいたい、というところに繋がるっていう。

seisui:そうですよね。ただ、落ち着きのなさが出てるのがギター・ソロのパートなのかもしれないです。

yokoyama:唯一そこで己を解放してる。笑

seisui:僕は気持ちが落ち着かないまま、とにかくずっと漕いで漕いで…って感じでバンドをやってるんですけど、yokoyamaくんはかなり器用になんでもこなしてくれるので、すごく助かってます。2nd EPのレコーディングも、yokoyamaくんがヴォーカルを録ってくれたりしてやりやすかったです。僕ががむしゃらに下手な運転をしているところを、yokoyamaくんが補助輪の役割をしてくれる。

yokoyama:でも補助輪だけじゃ進まないので。

── 上手く支え合ってますね。

seisui:どうしても僕が色々決断してみんなについてきてもらうことが多いので心配になってくるんですけど、そこは上手くやっていきたいですね。

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レコ発のために音源を作るっていう

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對馬拓
對馬拓Taku Tsushima
Sleep like a pillow主宰。札幌出身。音楽ブログの運営、ディスクユニオンのスタッフなどを経て、現在はライター/編集者が本業。主な実績は、揺らぎ、SPOOL、pollyなど国内シューゲイザー・バンドへのインタビュー、Tapeworms『Funtastic』ライナー執筆など。座右の銘は「果報は寝て待て」。