Posted on: 2022年5月14日 Posted by: 對馬拓 Comments: 0

■ レコ発のために音源を作るっていう

── 2nd EPは1st EPと対になっているとのことですが、元々そうなるように想定して制作していたのでしょうか?

seisui:いや、違うんですよ。まず1st EPは夏botさんにシンセ・アレンジをお願いしてクオリティも上がったから、配信だけではもったいないしCDにしよう、っていうので2021年に1枚出して。その後「f」のMVを出したらDREAMWAVESからお声がけいただいて、DREAMWAVES RECORDSからEPをリリースできることになって、その繋がりでTotal Feedbackにもお誘いいただいたんですよ。そしたらTotal Feedbackを主催しているcruyff in the bedroomのハタユウスケさんから「(2022年の)2月にレコ発やらない?」って連絡がきて、リリースから半年後くらいなのに1stのレコ発をやらせてくれるのかな?って思ったら、「新しい音源じゃないとダメです」って。それでみんなでめちゃくちゃ必死こいて作って。笑

yokoyama:レコ発のために音源を作るっていう。順番が違う。笑

一同:笑

seisui:僕は割とそういうのにすぐ飛びつくタイプなので、みんなに半ば無理やり「やろう」って言って作って。その段階で1stの延長線上かつ対になるような形がいいなと思ったので、最初から2作続くようには意識してなかったです。しかも、1stは2021年の9月に出したので、そこから半年も経ってないんですよ。めちゃくちゃ早い。

yokoyama:制作方法は1stと似てて、最初にリズム隊を録ってから一人一人のパートを加えていく、というやり方だったので、そういった意味でも1stと2ndは似てる部分があります。あと、2ndはmabataki時代の曲が多いので、1stを作る時点で2ndの曲が既に存在していた、という意味では起点にもなってる。

seisui:だから、ミックスをお願いした岩田純也(Triple Time Studio)さんにも「1stのような形でお願いします」って伝えて。

photo by Ryo Shimada

── 1stに対して、2ndはシンセの音をあまり感じなかったのですが、その辺はどうなのでしょうか…?

seisui:…そこがポイントなんですよ。

一同:笑

seisui:実は隠し味で、全部の曲に入ってるんですよ。薄く、ギター・ノイズのフィードバックと重ねて。抽象的なシンセの音を混ぜ合わせると音が整う、ということに夏botさんのアレンジで学ばせてもらったので、2ndでも入れてます。ちょっと独特なニュアンスも出るんですよね。

── なるほど。シンセの使い方を変えた、みたいなことですかね。

seisui:夏botさんと同じというよりは、僕なりに解釈して、って感じですね。…基本的に音作りは僕がしてるっていうのもあって、ちょっとみんなに聞きたいんだけど、出来上がった時の感想というか、作ってる時の気分ってどんな感じなの?

yokoyama:ちゃんと曲になるのかな〜と思いながら。笑

marcie:「なんとなくこうしたい」みたいな自分のイメージがあるので、ぼんやりとそれに近づいた…っていう感じですかね。

seisui:そっか。どうしても僕が音作りと並行してMV作ったりジャケットのデザインやったり、そういうのにグッと集中してるから、あんまり周りが見えてなくて。ずっと主観的に動いちゃってるから、みんなどう思ってるのかな?って。

kurage:それでいいんじゃないですかね。逆に気にせず我を通して欲しい。

seisui:僕、結構みんなに「これどう思う?」って聞くんですけど、結局どうしてもというところは僕がやりたいようにやってるんですよね。

kurage:そう。だから「いや、聞くなよ!」っていう。笑

一同:笑

seisui:うん、そこは気づいてる。

kurage:自覚してたんだ。笑

seisui:いや、自覚はしてなかったけど、結果そうなってることに最近気づいて、ごめんって思ってる。笑

kurage:いや、大丈夫ですよ。だんだん勝手が分かってきたし。

seisui:でもEPの曲順とかは僕よりみんなの意見の方がしっくりきたりするんですよね。

── では、今後もseisuiさんにはいい感じに我を通していただいて…。

kurage:これからもそれでお願いします。

── でも、そういうスタイルでみなさんがついてくるっていうのは、いい関係ではないでしょうか?

seisui:みんな本当にありがとう、って感じです。特にyokoyamaくんは色々と提案してくれたりすることが多くて。試してみたけどちょっと合わない…っていう時も多かったりするんですけど。

yokoyama:とりあえず何か投げてみて、seisuiさんにハマらなかったらまた違うのを投げて。だから「プレゼン」ですね。

seisui:yokoyamaくんが色々投げてくれるから、それで幅が広がったりすることもかなり多いです。

yokoyama(Gt.)photo by Iwata Koichirou

── 2nd EPのCDにはボーナストラックで「say」が入ってますよね。他の収録曲とは異なり疾走感があって、バンドの幅広さはそういう部分でも感じました。

seisui:ちょっとポストパンクっぽさもありますよね。

── CD限定のボーナストラックという点で、「CDに付加価値をつける」みたいな意味合いもあったのでしょうか?

seisui:そうですね。1st EPは特典でダウンロードコードをつけてたんですけど、今回も価格に見合う付加価値をつけつつ、お得感が欲しいなと思って。

■ 頭の中で曲を解析しようとして疲れちゃうんですよね

── せっかくメンバーみなさんいらっしゃるので、それぞれどういう音楽が好きなのか聞いてみたいです。

marcie:ドリームポップ、シューゲイザー系は海外を中心に好きですね。

── 最近よく聴いているバンドはありますか?

marcie:日本ですが、Bertoiaは好きで聴いてます。あとTape Wavesもサーフっぽいけど淡々としてて柔らかい感じで好きですね。

seisui:marcieくんは多分メンバーの中だと一番趣味が近いよね。叩くドラムもやっぱりシューゲイザーに向いてるというか、海外のシューゲイザーっぽい感じに仕上げてくれる感じがする。でもシューゲイザー以外も聴くよね?

marcie:普通にJ-POPも聴きますね。あとスピッツはすごく好きです。

── スピッツの一番好きなアルバムはなんですか?

marcie:『名前をつけてやる』です。やっぱり初期が好きで。

── 僕も同じです! それこそ初期はシューゲイザーの要素が強かったりしますもんね。

marcie(Dr.)photo by Iwata Koichirou

kurage:シューゲイザーは正直、全然聴かないですね。yeti let you noticeは大学の時からずっと好きで今でも聴いてます。バンドではplentyが一番好きで、ただ解散しちゃったので、今続いてるバンドでずっと聴いてるのはyeti let you noticeだと思います。あとライブを観てからADOYはよく聴いてます。Pale Wavesとかも。…とは言いつつ、K-POPしか聴いてない。笑

一同:笑

kurage:あと、mol-74のベースの髙橋涼馬さんがやってるSeabirdsがめちゃくちゃいいんですよ。その方が前にやってたuremaっていうバンドもめっちゃ好きで。マスロックな感じ。Seabirdsではギター/ヴォーカルやってて、uremaではベースだったんですけど、両方好き。ハード系というか、マスロックっぽいのが好きなのは北九州の風潮なのかもしれないです(※kurageは福岡出身)。

seisui:世代っちゃ世代なのかな?

kurage:どうだろう…でもマスロック世代かもね。一昔前、残響レコード系とかめちゃくちゃ流行ったじゃないですか。People In The Boxとかも北九州のバンドなんですよね。

yokoyama:今好きでよく聴いてるのは、ブラジルのIvan Lins(イヴァン・リンス)っていうアーティストで、ジャンルとしてはMPB(ブラジルのポピュラー・ミュージック)らしいんですけど、『今宵楽しく』(原題:Somos Todos Iguais Nesta Noite)っていうアルバムが一番好きで、家にレコードを飾ってます。

seisui:メンバーの中ではyokoyamaくんが一番幅広く聴いてるよね。

yokoyama:Jim O’Rourke(ジム・オルーク)も好きです。一回ライブを観に行ったことがあって、でもその時なぜか失神して倒れちゃって。笑

一同:笑

yokoyama:それで聴けなかったんですよ。でも(Jim O’Rourkeと)対バンしてたバンドの人がすごく良くしてくれて、終わった後にサインをもらって。

seisui:yokoyamaくんはエピソードも色々持ってる。笑

yokoyama:あとは、Punch Brothersっていう、マンドリン奏者(クリス・シーリ)がリーダーのバンドなんですけど、ジャンルとしてはブルーグラスで、そこに現代的な響きだったりっていうのを入れてて、すごく好きです。コーネリアスとか細野晴臣も好きですね。シューゲイザーはバンドに入るまではあんまり聴いて来なくて。今もめちゃくちゃ聴いてるわけではないですけど。だから僕の役目は、外からの要素を入れることなのかな。

photo by Ryo Shimada

seisui:僕はクラシック・ロックというか、Billy Joel、The Beatles、Carole Kingなんかをよく聴いてます。特にコロナ禍になってからはずっと家で仕事してるので、落ち着ける音楽が好きで。Chet Bakerみたいなジャズ系とか、クラシック・ピアノ曲集とかを流したり。で、たまにNirvanaとかそういうバンド系。シューゲイザーは、特に音源を作ってる時は本当に聴けなくなるんですよ。頭の中で曲を解析しようとして、落ち着いて聴けないし疲れちゃうんですよね。

marcie:大変ですね…マジで辛そう。

seisui:作品ができて2〜3ヶ月くらい経つとようやく聴けるようになります。「f」が出来上がった時はそういう曲を解析するモードが続いちゃってたので、「このイントロ朧げすぎるけど大丈夫かな」「でもリリースしちゃったしな」ってすごく心配になった時期もありました。出来上がりを客観的に見れなかったですね。

── いやあ…大変ですね。

seisui:だから音源の制作中は特に近しいジャンルの曲は聴けないですね。2nd EPのドラムはKensei Ogataさんにレコーディングをお願いしたんですけど、その時に同じような話をしたら「すごい分かる」って言ってて、やっぱりそうなんだなって思いました。脳が疲れてパンクしそうになるんですよ。

── こういうジャンル特有なのかもしれないですね。

seisui:かもしれないです。なので脳を休めたい時はクラシックとかジャズを聴くことが多いです。シューゲイザーじゃなくても単にバンドってだけで疲れる時があるので…。

── でも、興味深い話ではあります。

seisui:「f」を作ってた頃、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』っていう映画のサウンドトラックを何回も聴いてて、その影響はもしかしたらかなり強いかもしれないです。シンプルなストリングスが中心で、落ち着いた曲がずっと劇中に流れてるんですよ。だからバンドとしてシューゲイザーのフォーマットは取り入れてるんですけど、正面から「シューゲイザー・バンドです」っていう感じでやってるつもりはそんなになくて。アンビエントの影響も強いので、そういう部分はもっと出していきたいですね。

── 以前ちらっと「次回はもっとアンビエントな感じにしたい」と仰ってましたが、今のところそんなモードでしょうか?

seisui:うーん、ただ、ゆくゆくはアルバムを作りたいんですけど、その前に単発でシングルを何回か出して色々試しつつ、その集大成としてアルバムを出したいなと思ってます。客観的に見て、今はRideで言うと「赤ライド」「黄ライド」くらいの作品を作ってる感じですね。

── では、これからアルバムに向けて本格的に…?

seisui:でもみんなちょっと疲れちゃったので、一旦休憩ですね。笑

◯ 2022年3月5日 吉祥寺にて

* * *

■ Release

re:lapse – re:lapseⅡ.ep

□ レーベル:DREAMWAVES RECORDS
□ リリース:2022/03/16

□ トラックリスト:
1. wagon
2. timeless melody
3. hello
4. tonight, tonight, tonight
5. say(CD bonus track)

配信リンク:
https://songwhip.com/relapse2/relapse-iiep

re:lapse – re:lapse.ep

□ レーベル:DREAMWAVES RECORDS
□ リリース:2021/09/08

□ トラックリスト:
1. f
2. little, little
3. smile
4. neverland

配信リンク:
https://songwhip.com/relapse2/relapseep

■ Profile

re:lapse(リラプス)

〈L→R〉
marcie(Dr.)/ yokoyama(Gt.)/ kurage(Vo. Ba.)/ seisui(Vo. Gt.)

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Author

對馬拓
對馬拓Taku Tsushima
Sleep like a pillow主宰。編集、執筆、DTP、イベント企画、DJなど。ストレンジなシューゲイズが好きです。座右の銘は「果報は寝て待て」。札幌出身。