Posted on: 2021年10月14日 Posted by: Sleep like a pillow Comments: 0

1991年にリリースされ、シューゲイザーの金字塔を打ち立てたMy Bloody Valentineの2ndアルバム『Loveless』。2021年で30周年を迎える本作を記念し、弊メディアでは「My Best Shoegaze」と題した特集記事を不定期で連載する。SNS上の音楽フリークやライター、さらにはアーティストに至るまで、様々なシューゲイズ・リスナーに各々の思い入れの強い作品を紹介していただく。

Vol.12は、シューゲイザーをはじめとした「マイナー音楽×アイドルソング」がコンセプトのアイドルグループ、RAYのメンバーとして活動する、内山結愛の5枚。

■ My Bloody Valentine – Loveless(1991)

Label – Creation Records
Release – 1991/11/04

高校1年生の夏に初めて聴いた時は正直…よく分からなかった。My Bloody Valentineを聴いてから、かなりの時間、輪郭を掴めないふわふわした状態が続いていたが、改めて『Loveless』の一曲一曲と真剣に向き合った時、しっかりと「分かった」気がした。轟音ギター、独特の浮遊感、歪み唸る中で見つけたメロディの甘さ。最初はピンと来なかったものに、異なるタイミングで惹き込まれる時が一番危ないという経験則がある。最近とあるきっかけでMBVの音源を全て聴き、関連インタビューや本をひたすら読み漁ったことで「分かった」モードに入った私は、すっかりMBVが特別な存在になってしまった。私にシューゲイザーを教えてくれたMBVという音楽を、この先も愛さずにはいられない。

■ For Tracy Hyde – he(r)art(2017)

Label – P-VINE
Release – 2017/11/02

こんなにも煌めいているギターの音を、こんなにも胸がくすぐったくなるような言葉を、こんなにも心ときめくメロディを知らない。直感的に、確信的に、これは「恋」だと思った。轟音ギターのサウンドも好きだが、煌めくギターが駆け抜けていくようなシューゲイザーにめっぽう弱い。次々と繰り出される甘いメロディは、心の弱いところを突くように、最初から知っていたかのように、私を包み込み、虜にした。シューゲイザーの煌めきにズッキュンと心撃ち抜かれた、私にとって忘れられない一枚。

■ クレナズム – In your fragrance(2019)

Label – MMM RECORDS
Release – 2019/12/18

不意打ちだった。CDは買う方だが、サブスクもフル活用している。Twitterで一日一枚、聴いたアルバムをツイートで紹介するため、気になる・聴きたい音楽が常に「お気に入り」にストックされていて、その日の気分や耳にしたニュース、人からのおすすめなどを参考に再生ボタンを押す。あの日もいつものように「お気に入り」に入れてあったこの作品を何気なく再生した。一曲目の一音目から惹き込まれ、止まらなかった。(結構チョロいのも自覚しているが)間違いなく「一聴き惚れ」だった。シューゲイザーは青いイメージがある。深海のようなほとんど黒に近い深い青、夜の青、澄んだ夏の空みたいな青。この作品の音で表す「青」が目に見えた。いつかライブに行くことを夢見て、今日も私は口ずさむ、「今を知る過去も色を知る花も 嘘にしよう」。

■ きのこ帝国 – eureka(2013)

Label – UK.PROJECT
Release – 2013/02/06

きのこ帝国との出会いは、実はこのアルバムには収録されていない、YouTubeでふと耳にした「金木犀の夜」という曲だった。そして、金木犀の香りに誘われ、辿り着いたのが『eureka』だった。儚く、それでいて芯のある力強い歌声、ギターの轟音と残響音、生々しい言葉、美しくて危うい攻撃力あるメロディに衝撃を受けた。「金木犀の夜」は繊細に煌めくようなきのこ帝国の表の側面で、一方『eureka』はダークで凶暴な裏の側面だと感じた。私は、ギャップに弱いところがある。きのこ帝国にいまだに釘付けなのは、そのギャップ、二面性があるからだと思う。

■ RAY – Pink(2020)

Label – DISTORTED RECORDS
Release – 2020/05/23

自分たちの音楽を出すのは少々ずるいというか…小っ恥ずかしくもあるが、自分とシューゲイザーを考える上でどうしても外せない。与えられるのではなく、自分自身が届けるシューゲイザーという点で他の作品とだいぶ、想いも聴き方も違う。普通なら頭を空っぽにして楽しめるが、このアルバムはそれができたことはない。落ち着いて聴こうとしても気付けばライブが頭によぎって「あれ、ここの立ち位置って…」「ここのハモリは…」と考え込んでしまう。純粋に楽しむにはかなりの集中力が必要な、言ってみれば私だけの不思議なアルバム。愛情をかけて育てた我が子のように、こんなにも愛しく想うシューゲイザーは他にない。自分の人生を語る上でなくてはならない一枚だと心から思う。私が頭を抱えながら聴く音楽を、どうかあなたが純粋に楽しめることを願って──。

* * *

文=内山結愛(RAY)
編集=對馬拓

Release

RAY – Yellow

Label – DISTORTED RECORDS
Release – 2021/06/19

Profile

内山結愛(うちやま・ゆうあ)

大学生兼アイドルグループRAYのメンバー。RAYではシューゲイザーをはじめ、IDMから激情ハードコアまで、「マイナー音楽×アイドルソング」に挑戦している。音楽レビューnoteを週に一度のペースで公開し、Twitterでは「#内山結愛一日一アルバム」で毎日なんらかのアルバムを紹介中。DJとして活動することも。古今東西の名盤を聴き漁りながら日々音楽を楽しむ。

note:https://note.com/__yuuaself__/
Twitter:https://twitter.com/__yuuaself__
RAY 公式HP:https://r-a-y.world/

Author

Sleep like a pillow
Sleep like a pillowMedia & Platform for Shoegaze +
シューゲイザーとその周辺について。多様化/細分化するシューゲイザーの「今」を伝えるメディアを目指します。現在は、對馬拓(主宰)、鴉鷺、鈴木レイヤの3名で運営中。