Posted on: 2021年8月24日 Posted by: 對馬拓 Comments: 0

■ Label – Orindal Records 
■ Release – 2021/08/13 

米ノースカロライナ州アシュビルを拠点に活動する5人組シューゲイザー・バンド、Wednesdayの最新アルバム。

2020年にリリースされた1stアルバム『I Was Trying to Describe You to Someone』では「Bollboard」「Love Has No Pride (Condemned)」に代表されるように、スロウコアやグランジ、シューゲイザーなどの要素を、インディー・ロック経由のポップセンスで織り交ぜたサウンドを提示した彼ら。近年で言えばMoontypeやGold Cageの壮大なサウンドを想起させ、あどけなさが残るヴォーカルはSnail Mailとも共振する、ノスタルジーに満ちた音像をこの時点で既に確立していた。

今作はそれらの要素を残しながらもさらに踏み込み…いや、大いに飛躍し、よりヘヴィー・シューゲイズに接近した印象の内容。冒頭の二曲「Twin Plagues」「Handsome Man」はまさにその象徴であり、歪みまくったファジーなサウンドを放つ。ざらついたギターが揺らぐグランジ・シューゲイズ「One More Last One」も中盤の見せ場だ。そして、それらの要素を一手に引き受けたかのような「Three Sisters」のダウナーな疾走感で、拍手を送るしかなくなる。気づけば12曲34分、あっという間だ。実に潔い。

ところで、Wednesdayのbandcampを訪れると「country-gaze」なるタグが設定されているが、覗いてみるとほとんど彼らしかその見慣れないジャンルを名乗っていない。なるほど、カントリーがアメリカ南部発祥で、南東部に位置するノースカロライナが彼らの拠点ということを踏まえれば、彼らにとってカントリーは幼い頃から触れている身近な音楽なのかもしれない。何を隠そう、それこそカントリーでよく使用されるラップ・スティール・ギター(水平に置いて演奏するギター)を操るメンバーが在籍しているくらいだ。彼らが鳴らすノスタルジーの根源は、グランジやインディー・ロックというよりは、むしろカントリー的なマインドに由来するものなのかもしれない。とにかく、細分化するシューゲイズ・シーンの中でも、彼らは特異なアイデンティティを持った存在のバンドだと言えるだろう。

ジャケットにはペシャンコになった廃車が積み上げられているが、世の中の具合も、残念ながらちょうどこんな感じだ。ただ、そこに佇んで斜に構えるヴォーカルのKarly Hartzmanの頼もしさと言ったら。Wednesdayが放つ渾身の轟音があれば、僕らだって案外へっちゃらかもしれない。Wolf Aliceの『Blue Weekend』もそうだったように。

文=對馬拓