: 2026年7月26日 : 對馬拓 Comments: 0

1991年にリリースされ、シューゲイズの金字塔を打ち立てたMy Bloody Valentineの2ndアルバム『Loveless』──2026年、MBVが実に8年ぶりの来日公演を開催し、11月には『Loveless』が35周年を迎える。

この節目に、Sleep like a pillowでは「re: my best shoegaze +」(アールイー:マイ・ベスト・シューゲイズ・プラス)と題した特集企画を不定期で連載。シューゲイズが多様化 / 細分化 / 要素化を繰り返し、広くシェアされた今、それぞれがシューゲイズをどう捉え、どう認識しているのか──原点となるアーティストや、フェイバリットに挙げる作品などを通して、改めて解き明かしていきたい。

第1弾は、弊メディア主宰、及び音楽ライター / 編集者の對馬拓によるセレクト。

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■ the brilliant green – Los Angeles

DefSTAR Records | 2001年1月1日

物心ついた頃から母の車で流れていたアルバムの1つで、当時は音楽のジャンルなど何も知らず、サウンドではなくただ “歌” を聴いてなんとなく惹かれていた──そうした受動的なリスニングが今に繋がる重要な下地を作ったのだろう、後にブリグリを能動的に聴くようになったときに気づいたUKロックからの影響、そして “ノイジーなギター・サウンド × 美しいヴォーカル・メロディ” という組み合わせが、僕の感覚をシューゲイズに適応するものに変えてしまった、そんな気がしてならない。同時にこのアルバムは、J-POPに潜むオブスキュアな領域のシューゲイズを考える上での重要な起点として、特別な意味を持ち続けている。


■ スピッツ – 三日月ロック

ユニバーサルJ | 2002年9月11日

スピッツのシューゲイズといえば初期作を挙げるのが常だが、翳りのあるギターと死を連想させる詞世界が香る「水色の街」や、打ち込みも相まってどこかエレクトロ・シューゲイズ風味の「ババロア」など、本作もなかなか見過ごせない。前年のアメリカ同時多発テロに影響を受けたアルバムだというが、それは夜にそっと寄り添い、聴く者を包み込むような作品全体のトーンにもきっと表れていて、サウンドは違えど精神性はかなりシューゲイズに通ずるものがある。ちなみに『ハヤブサ』収録の「甘い手」はRideの「Vapour Trail」を想起させたり、タイトルからそれっぽい「スターゲイザー」もオルタナ感が強かったり、この時期のスピッツはオブスキュアな文脈でも重要。


■ Guitar – Sunkissed

Morr Music | 2002年11月4日

まず本作がエレクトロ・シューゲイズの金字塔であり完成形であることを断言したい。シューゲイズの最初のリバイバルが電子音楽の文脈から起こった証左の1つであり、MBVが「soon」の時点で提示していたダンス・ビートの享楽的シューゲイズを拡張させ、その多幸感をアルバム全体に行き渡らせたのだから。……と言いつつ、シューゲイズは “バンド” こそ至高だと思っていた昔の僕は、Guitarを初めて聴いたときも「なるほど」くらいにしか思っていなかった。しかし徐々に打ち込みならではの心地良さに気づき、MBVの『Loveless』が実はサンプリングを多用していることを知ってからは、かなり印象が変わった。今では無人島に持っていきたいレベル。


■ 揺らぎ – nightlife

Self Released | 2016年12月27日

2017年、まだ僕が札幌にいた頃、SNSをきっかけに知ったのが揺らぎ。自分よりも若い人たちが、しかも日本で、こんなにもかっこいいサウンドを鳴らしているという事実が衝撃的で、国内の現行シューゲイズを追いかける直接的なきっかけになった。後のディスコグラフィを考えれば未熟な部分もあるかもしれないが、バンドの世界観は既に完成の域にあるように感じる。迸る青さや透明感を湛えながらも、それは初期衝動というよりは確かな意志による、どこか達観した優しい青さで、僕はそれにずっと助けられてきた。下北沢THREEで観た「sleeptight」の演奏。何度も反芻したその光景がなければ、自分の人生はもっとつまらないものになっていただろう。


■ Serena-Maneesh – S-M 2: Abyss in B Minor

4AD | 2010年3月22日

タイトルもアートワークもかっこよすぎる。が、それ以上にサウンドがなんとも独特で、その奇妙な印象にいつの間にか抗えなくなっていた。自分にとって “ストレンジなシューゲイズ” という歪な美的感覚に目覚める入口になった作品で、後にSwirliesにハマったのもこのアルバムの影響。まるでMBVの『Isn’t Anything』をザクザク刻んで当時の “ニューゲイザー” 的感覚で再解釈したようなサウンドは、性急かつ予測不能で、聴く者の感覚を揺さぶり、あるいは試すような、非常に挑戦的でスリリングな雰囲気を纏っている。思えば4ADに強く惹かれるようになったのも、Cocteau Twins以上にSerena-Maneeshの存在が大きい。


■ Swirlies – They Spent Their Wild Youthful Days in the Glittering World of the Salons

Taang! Records | 1996年3月1日

シューゲイズが死にかけていたであろう90年代中盤、ボストンから登場したあまりにストレンジで異彩を放つ1枚。恐ろしく長いタイトル、ハードとソフトの折衷のような不可思議で美しいアートワーク、そして歪な音像。パンク系のレーベルであるTaang!の出身だけあってラフな演奏も感じられるが、打ち込みやサンプリングも取り入れた緻密さも見せるサウンド・デザインは非常に独創的。過渡期でありながら、これ以上の完成はないとも思える、なんとも形容しがたいオーラにたまらなく惹かれてしまう。ノイジーなギターとアグレッシヴなアンサンブルが炸裂する「Two Girl Kissing」は超名曲。

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■ 對馬拓(Sleep like a pillow)の6枚

the brilliant green – Los Angeles

スピッツ – 三日月ロック

Guitar – Sunkissed

揺らぎ – nightlife

Serena-Maneesh – S-M 2: Abyss in B Minor

Swirlies – They Spent Their Wild Youthful Days in the Glittering World of the Salons

Author

對馬拓
對馬拓Taku Tsushima
Sleep like a pillow主宰。編集、執筆、DTP、イベント企画、DJなど。ストレンジなシューゲイズが好きです。座右の銘は「果報は寝て待て」。札幌出身。