yaginiwaとnerdnekoが手を組み、2025年の夏に始動したオルタナティヴ・ユニット、blue web.(ブルーウェブドット)が満を持して1stアルバム『Blue Reverberation』をリリースした。これは冗談でも誇張でもなく、世界をガラッと変えてしまう、エポックメイキングな作品である。それぞれ宅録 / ボカロPを出発点としながらクラブ・シーン / バンド・シーンで活動してきた2人が出会い、ぶつかり合った才能が、マジでスパークしている。そして、僕のシナプスもスパークしてしまった。もうblue web.のいない夏には戻れない。
数多のジャンルが絶えず分岐し派生していく中で、blue web.はシューゲイザー、オルタナティヴ・ロック、エモ、さらにはブレイクコアやボーカロイドなど様々な文脈を自由に横断し、巻き込み、接続する。過剰なほどの “青さ” や “速さ” を纏いながら。彼らが鳴らすのは、どこかにあった音ではなく、どこにもない音だ。それはつまり、彼らの音楽が誰にとっての居場所にもなり得る、ということではないだろうか。アルバムのリリースを記念した初インタビュー。
*本インタビューは制作中のマガジン『pygmalion』の誌面にも掲載予定。Webでの先行公開となります。
https://camp-fire.jp/projects/960342/view
質問作成 / 文 / 編集=對馬拓
ライブ写真=miochan(2026年5月8日『iのかたち 2』@下北沢 LIVE HAUS)
Q. まずは簡単に自己紹介をお願いします。
yaginiwa 個人名義では、ボーカロイド×ブレイクコアを軸に、楽曲制作やDJ / ライブ出演などをしています。blue web.では、お互いが作詞 / 作曲 / 編曲を担当しており、私は特に電子音楽 / クラブ・ミュージック的なアプローチを得意としています。
nerdneko 個人名義では、ミクゲイザー(初音ミク×シューゲイザー)を軸に、音源制作やライブなどの活動をしています。blue web.では、楽曲によって作詞 / 作曲 / 編曲などを担当しており、特にギター・ワークを得意としています。

Q. いわゆるブレイクコアやブレイクゲイズの文脈はTURQUOISEDEATH、Astrophysics、7mintなど海外のアーティストしか知らなかったのですが、そうしたサウンドを掲げたblue web.という存在が、日本のインディー・シーン、しかもライブ・シーン / クラブ・シーンとも繋がりのある中から登場したという事実がとても嬉しいです。ユニットを結成するに至った経緯を教えてください。
nerdneko 共通の友人を介して知り合ったのがきっかけです。音楽をはじめ、カルチャーなどの嗜好が近いことが分かり、まずは遊びで1曲共作してみることになりました。実際に作ってみると、2人の要素が混ざることで面白い化学反応が生まれましたし、お互いに共通言語が多かったので、音源制作だけでなくヴィジュアル面を含めたニュアンスの擦り合わせもすごく楽しかったんです。それなら、是非ユニットとして継続的にやっていこうということになりました。
yaginiwa “ブレイクゲイズ” 自体はもちろん大好きですが、結成の経緯において、それを特別意識したわけではありませんでした。元々自分はブレイクコアや電子音楽、nerdnekoはシューゲイザーやバンド・サウンドを軸に活動していて、お互いがそれぞれ好きなものや得意なアプローチを持ち寄った結果、自然と今のblue web.のサウンドになっていった感覚が強いです。なので、2人で作りたいものを追求していった結果として、ブレイクゲイズとも接続するような音楽になった、という方が近いと思います。
Q. 現在はTyrkouazや2beefなど、日本でもブレイクコアやドラムンベースの要素を取り入れる新しい世代のアーティストが登場し、注目されてきている印象です。まだまだ局所的なブームかもしれませんが、こうしたシーンの現状についてどう見ていますか?
yaginiwa そういったアーティストが増えたり、注目されていくのは純粋に嬉しいですし、単にブレイクコアやドラムンベースといった “ジャンル” だけに回収されず、それぞれのアーティストが独自のルーツや美学を通して、独自の表現をしている点が面白いと思っています。
例えばผ้าอ้อม99999や前髪ぱっつん少年なども、ジャンルは違えど近い感覚を持っていると思っていて、バンドやグループという演奏形態を持ちながら、ギターもドラムもクラブ・ミュージックも混ぜこぜにして、「自分たちの好きなものを全部詰め込んじゃえ」みたいな感覚が根っこにあるように感じています。
なので、ブレイクコアやドラムンベースに限らず、バンド・シーン / クラブ・シーンといった垣根も関係なく、それぞれの場所で活動している人たちが交わりながら盛り上がっていくようなムーヴメントが、ライブ現場も含めてもっと活発になっていけばいいなと思っています。
Q. 特にblue web.での活動において、これまで2人が影響を受けた音楽(その他カルチャー全般など)を教えてください。
nerdneko 音楽はかなり幅広く好きなのですが、blue web.においては特にLOWPOPLTD.やParannoulといった宅録系譜の音楽から影響を受けています。ボーカロイドでいうと、『mikgazer vol.1』や初期ボカロックのようなサウンド感やポップなメロディも、自分の中ではかなり血肉になっていると思います。一方で、underscoresや100 gecs、Porter Robinsonのようなエレクトロ・ミュージックも大好きなので、そういったものも自然と自分たちの音楽に入っていると思います。
カルチャーでは、映画、特に邦画や、漫画、ファッションなどが好きです。そういった作品から受けた印象を、楽曲のモチーフやヴィジュアル面でのアプローチとして取り入れることも多いです。
yaginiwa blue web.での影響という点では、LOWPOPLTD.やParannoul、iVy、HASAMI group、未来電波基地といった、“宅録” を出自に持つオルタナ / シューゲイザーの系譜のアーティストが、ヴィジュアル面も含めて大きくあります。その上で、スーパーカーのようなバンド・サウンドとエレクトロニック・ミュージックが融合した音楽や、個人的なルーツであるブレイクコア、ギター・ロック、ボーカロイド / ネット音楽など、自分がこれまで触れてきた様々な音楽からの影響も自然と滲み出ているのかなと思います。
アルバム『Blue Reverberation』でいえば、I have a hurt、ひとひら、nuなどを中心に、エモからの影響も強くあります。
Q. blue web.を貫くテーマ(主題)の1つとして、ユニット名の通り “青” があるかと思います。ここでいう “青” は、PCのブルースクリーンなどを想起させるものであり、セカイ系を象徴する色でもあり、より広く捉えれば特定の感情を表すものでもあるかもしれません。blue web.における “青” という色の意味を教えてください。あるいは、2人にとって “青” はどういう色ですか?
nerdneko “青” は、2人とも個人の活動においてテーマ・カラーの1つとして共通している色で、それぞれの活動名にも取り入れています。
ただ、blue web.における “青” に明確な1つの意味を設定しているわけではありません。孤独や寂しさといった精神性もあれば、青春や未熟さ、あるいは希望のような感情も含まれていて、様々なグラデーションを持った色だと思っています。その時々の楽曲によって、そのグラデーションの中から違う感情を掬い上げて作品にしているような感覚があります。
yaginiwa 自分も “青” は様々な表情を持った色だと思っています。実際、自分の場合、blue web.での表現とyaginiwaでの表現では、異なる “青” を描いている感覚があります。例えば、yaginiwaでは空想の世界や夏の風景など憧憬としての “青” や、切なさや寂しさ、涙のようなイメージと接続する “青” を作品に溶かし込んでいる感覚があります。
一方で、blue web.においては、痛みや孤独のような鬱屈とした感情を、より強く滲ませている感覚があります。映画やアニメ、洋服などにおいても、青をテーマにした作品がとても好きなので、自分の表現の根幹に根強くある色だと思います。


Q. 1stアルバム『Blue Reverberation』が素晴らしいです。30分未満ながら高密度で、通して聴くと緩急やストーリー性もあり、まさに今の2人のクリエイティヴが詰まっているように思いました。アルバムの構想はどうやって生まれましたか? また、アルバム全体のコンセプトや、「Blue Reverberation」=「青い残響」というタイトルに込めたものについても教えてください。
yaginiwa アルバムの構想としては、それぞれのルーツであるシューゲイザーやブレイクコアを大切にしつつも、blue web.として2人に共通する美学を織り交ぜながら、他にはない質感を持った作品を作りたいという思いがありました。
制作にあたっては、常にアルバム全体の流れを意識していました。せっかくアルバムという形態でリリースするのであれば、単に楽曲を並べるのではなく、通して聴くことに意味のある作品にしたいと思い、曲順も含め、最初から最後まで聴いたときの印象を何度も確かめながら制作しました。特に、ブレイクコアの激しいパートと、アンビエントやポエトリーによる静かなパートの緩急については、DJ MIXのように異なる質感の楽曲が連なりながら、1つの流れを作っていく感覚も意識して構築しました。
『Blue Reverberation』というタイトルには、このアルバムに込めた様々な “青” が、聴いてくれた人の中にある “青” と共鳴し、聴き終えた後にも残響のように余韻として残っていくような作品になってほしい、というイメージを込めています。
nerdneko 実はblue web.として始動する際に、既にアルバム1枚分ほどの楽曲や構想がありました。ただ、そこから改めて作品全体を見直して、最終的には1年越しのリリースになりました。当初は、それぞれの持ち味や楽曲どうしの流れといった、比較的表層的なアプローチから作品を作っていた部分があったと思います。
そこから1年間、音源制作やライブを通して2人でコミュニケーションを重ねる中で、徐々にblue web.としての輪郭が見えてきました。最終的には、夏の景色を中心にしながら、そこに色々な感情が交差していく、1つのストーリー性を持った作品になったと思っています。
Q. 楽曲のクレジットを見ると、2人のうち1人が作詞 / 作曲どちらにも関わったり、あるいはいずれかのみに関わったりなど様々な形があります。楽曲の制作はどのように行うことが多いですか? 先にギターのフレーズやビートがあったりするのでしょうか?
nerdneko 曲によってかなり異なるのですが、基本的にはメロディとシンプルなビートが先にあることが多いです。それぞれが元になるデモ音源を作って、それをお互いに投げ合うような形ですね。なので、最初のデモを作った側が、その段階では歌詞まで含めて作ることが多いです。最終的なブレイクビーツの刻みや構成のアレンジをyaginiwaさんが行うことが多いので、それまでは2人でバンド・サウンドの音源を作っているような感覚に近いかもしれません。
お互い個人の活動も精力的に行っているので、実際の制作ではデータのやり取りがかなり多いです。ただ、家でコードや構成を相談しながら2人で作った曲もあったりして、曲ごとに色々なアプローチを試しています。これからも、方法を固定せずに、その時々で面白いと思える作り方を探しながら作品を作っていきたいですね。

Q. 特にM2「yuugure」〜M3「Blue Reverberation」〜M4「SUMMERENDS」はDJセットのようにシームレスに繋がり、畳み掛けるような高速ブレイクビーツの連続で、アルバムの重要なポイントとして “速さ” というものがあると思いました。それは単に駆け抜けていくクールな疾走感というより、何かを振り切るための焦燥に満ちた切実なスピードであるように感じています。この “速さ” の意味を知りたいです。
yaginiwa 「何かを振り切るための焦燥に満ちた切実なスピード」という表現は、まさに自分たちの音楽にある感覚だと思います。“速さ” には、自分自身の不甲斐なさや焦燥感を振り切ろうとする感覚があります。また、それは高速なブレイクビーツだけではなく、音が次々と押し寄せてくるような “情報過多な音像” にも表れていると思います。
自分にとって、そうした速さや情報量の多さは、一種の “逃避” でもあります。立ち止まって何かと向き合うというより、考える隙間すらなくなるほど音を詰め込み、思考を遮断して、ただ叫ぶような感覚です。特にM2〜M4は、そうした衝動がアルバムの中でも強く表れているパートだと思います。

Q. 初音ミクが8曲中6曲にフィーチャリングされている中で、M5「彼岸花」のみ人間(nerdnekoのライブ・サポートにも参加しているitise sionさん)によるポエトリーリーディングになっているのがとても印象的でした。アルバムの中間地点に人間の声が入っていることは重要な意味を成しているように思いますが、いかがでしょうか?
nerdneko まさにアルバムの重要なエッセンスとして、blue web.始動時の企画でバンド・セットとしても一緒に演奏していただいたitise sionさんに参加していただきました。
僕たちは2人ともボカロPなので、表現としてボーカロイドが歌うことの良さや、ある種の無機質さが合う部分は多いと思っています。一方で、楽曲を通して伝えたい中身には、かなり人間的な感情があるんです。そこでアルバムの中間地点にあたるこの曲では、少し人間味のある要素を入れたいと思い、作詞とポエトリーをお願いしました。快く引き受けていただいて、とても良い形になったと思います。日常の中にあるような生々しいニュアンスも出したかったので、録音も駅前のロータリーで行っています。
Q. blue web.においてはイラスト、グラフィックの質感も重要かと思います。アーティスト・イメージ / アルバムのイラストは古瀬ゆらゆらさん、アルバムのジャケット・デザインは式島久遠さんが手掛けていますが、それぞれどのような経緯で依頼しましたか?(個人的に式島さんの作品はkinoue64のアートワークで知って衝撃を受けました。)
nerdneko まずスタート地点として、実写の背景とイラストを組み合わせたヴィジュアルにしようという共通認識が2人の間にありました。
古瀬ゆらゆらさんは友人を介して繋いでいただいたのですが、劇画的すぎず、かといってポップすぎない、絶妙なニュアンスでお願いしたところ、とても素敵なイラストを描いていただきました。式島久遠さんは以前からSNSで作品を拝見していて、実写やコラージュのような作風が、blue web.の音楽性にもすごく合うと思い、ご依頼させていただきました。
2人ともアートワークなどの視覚的な部分はかなり重要視していたので、自分たちの音楽をそれぞれの解釈で素敵な形にしていただけたことを本当に嬉しく思っています。

Q. 今回のアルバムは、現時点での集大成であると同時に、スタートラインに立ったような感覚もあるのかなと想像しています。これからの活動の展望、目指したいところなどを教えてください。
yaginiwa 本作は1stアルバムとして、お互いのルーツや持ち味を詰め込みつつ、今のblue web.を象徴する作品に仕上がったと思います。ここを1つのスタート地点として、これからも色々なアプローチを模索しながら、blue web.ならではの音楽を作っていきたいです。ライブも積極的にやっていきたいですし、「FUJI ROCK」や「SUMMER SONIC」、「SYNCHRONICITY」などの大型フェスにも、いつか出演したいです。
そして何より、自分たちの作品が、聴いてくれた誰かにとって心が動くような音楽体験になれば嬉しいです。
nerdneko まさに今の『Blue Reverberation』が1つの集大成であると同時に、ここからがスタートという感覚があります。2人とも常に新しいことにチャレンジしていきたいという思いがあるので、ライブでは国内外を問わず、色々な場所で活動してみたいです。
音源についても、これまでとは異なるアプローチを試してみたいですし、blue web.としての楽曲制作だけではなく、楽曲提供など、自分たちの音楽を別の形で広げていくことにも挑戦してみたいと思っています。
■ Release

blue web. – Blue Reverberation
□ レーベル:Self Released
□ 仕様:Digital
□ リリース日:2026年8月5日(水)
□ トラックリスト:
1. Lower.
2. yuugure (feat.初音ミク)
3. Blue Reverberation (feat.初音ミク)
4. SUMMERENDS (feat.初音ミク)
5. 彼岸花 (feat.itise sion)
6. 樹海 (feat.初音ミク)
7. Drive My Car (feat.初音ミク)
8. やがて幽霊になる (feat.初音ミク)
*配信リンク:
https://linkco.re/3hFH7Vx7
■ Event

〈Blue Reverberation〉
2026年9月26日(土)東京 幡ヶ谷 Forestlimit
[DAY]
OPEN 18:45 / START 19:00
Live:blue web. / Radddjur / Cafuneiro / Spit lulu’s
[NIGHT]
OPEN & START 22:30
Live:blue web. / 罅 / Jesse Ruins / There is a bus stop across the street, / Magnolia Cacophony
DJ:postmodernhippie / yaginiwa / Telematic Visions / meweta
[チケット]
ADV ¥3,000 / DOOR ¥3,500 / DAY & NIGHT ¥5,000
https://forms.gle/M6F2ANSHpctCFL8u7
*すべて+1drink
*再入場可能
■ Profile
Author

- Taku Tsushima
- Sleep like a pillow主宰。編集、執筆、DTP、イベント企画、DJなど。ストレンジなシューゲイズが好きです。座右の銘は「果報は寝て待て」。札幌出身。


