揺らぎ『For you, Adroit it but soft』インタビュー 4人の心情と化学変化がもたらした自由なアルバム

Interview
■「スロウコアとか合いそう」みたいなことを結構言われて

對馬:では、曲ごとの話に移りましょう。冒頭の「While The Sand’s Over」は空調の音が入っているとのことですが、どのようにしてできた曲なのでしょうか。

Yusei:元はKantaroのギターやね。

Miraco:レコーディングスタジオでかんちゃんが一発録りで作った、って感じだね。

Kantaro:(最初から)一発録りしようって感じでもなかったけど、色々リバースさせて良い部分を貼り付けて重ねていったら一発で上手くいって、そこから「何を足していく?」みたいな話になって…。

Yusei:荻野さんが空調のアイデアを提案してくれた。

Miraco:マイクの先端のグリルを外して、アシスタント・エンジニアの水元さんが机に上って録ったんだけど、荻野さんがその時「水元さん、風になってください!」って言ってたのが、めっちゃ面白かった。笑

Kantaro:誰よりも荻野さんのテンションが高かった。「もうちょっと、もうちょっと!」って言って。笑

一同:笑

Yusei:(僕らと)一緒に作ってるのをめっちゃ楽しんでたよね。みんなも楽しかったし。

Miraco:あと、そのスタジオが楽器のためにわざと空気を乾燥させてたから、喉に直接吸入させるタイプの加湿器を買ったんですよ。それも楽器として使えるなって思って、その音もミックスさせました。

Kantaro:ギターを4本くらい重ねることで低音もどんどん重なっていった結果、ベース音みたいなのが自然と出来て。なので、そこから「何の音を入れよう?」って考える余地が出てきましたね。

Miraco:即興で歌も入れたんだけど、それも一発で決まって。最後に息を吸う音を入れたりとか、遊びながら作れて楽しかったかな。

Kanataro:色々鳴ってる感じはするけど、実は空調と声とギターだけっていう。すごいシンプル。

對馬:その序曲的な「While The Sand’s Over」から「Sunlight’s Everywhere」に繋がりますが、この曲は今作の中で一番気合が入ってるとのことで。さっきも少し話してましたが、初めは打ち込みのトラックだったと。

Kantaro:私がWeb CMの提供用にデモで作ったトラックがあって、それをメンバーに共有したら秋田がヴォーカルを足して、「いけそうじゃない?」ってなって。それでスタジオに持って行って作り始めたのがきっかけですね。

Miraco:最初はかんちゃんが打ち込んだ通りにやってて、それがすごいダークな雰囲気で低音バキバキみたいな感じだったんだけど、「なんか違う」と思って。どんどん進化して構成とか使ってる楽器とか音も変わって、最終的にこうなった。構成はすごいこだわったかな。

Yusei:原型はほぼないね。

Kantaro:バージョンとしては15番目、くらいちゃう?笑

Yuesi:数えきれんな。笑 気合が入ったというか、一番(制作が)長かったよね。

Miraco:長かった…。

Uji:揺らぎとしては初めてシンセの音を実際にがっつり使った、という意味でも一番(制作の)ウェイトが大きかった気がする。

對馬:「That Blue, I’ll be coming」は、かんちゃんが適当に弾いてたギターが元になっていると。

Miraco:かんちゃんがスタジオで適当に弾いてたフレーズがめっちゃ良いなと思って、適当に歌をつけて、勝手に録音して。それをあとで聴かせて「これ、良いから曲にしよう」って。笑

Yusei:あの(2:11あたりからの)アルペジオをKantaroが弾いてて。

Miraco:そうそう。そのアルペジオがすごい良くて。

Yusei:あと、Kantaroがずっと「スロウコアやりたい」って言ってて。それで前半のドラムが出来上がって。

Kantaro:いやあ…スロウコアが、好きで。笑

一同:笑

Kantaro:私の周りにハードコアとかが好きな友達が多いんですけど、そういう人たちと話してて「(揺らぎに)スロウコアとか合いそう」みたいなことを結構言われて。それで聴き始めて「意外と合うのかも?」って思って揺らぎに持ち込んだんですけど。前半の重めのビートとかは、特に良い感じに取り入れられたかなと思います。

對馬:そこから徐々にダイナミズムを増していく展開には圧倒されます。

Miraco:あの展開も「アルペジオをどう聴かせるか」っていう--アルペジオを轟音と同居させる部分は頑張ったかもしれない。

揺らぎ – That Blue, I'll be coming (Official Music Video)

Uji:個人的には、「That Blue, I’ll be coming」が一番思い入れがあるというか、ベースをコードで弾いてみたり色々なアプローチをしたという意味で、印象深い曲です。曲の展開も、最初の静かなところからアルペジオのパートになって、最後は一気に音を出して終わる--っていうのが、すごく好きな曲です。

Miraco:かんちゃんのアルペジオを聴いて「好き!」って言ってたもんな。

Uji:好きです。

Kantaro:笑

■ 頭の隅で空間を組み立ててる意識はあるかな

對馬:「An Atrium」は、学生時代から建築を学んでいたMiracoらしいタイトルだなと勝手に感じてたんですけど(※3)、どうやら違うみたいで。恥ずかしい。笑

(※3:「アトリウム」は建築用語で、ビルなどにおける吹き抜けの空間を指す。)

一同:笑

Kantaro:曲が完成してタイトルを決める時に、歌詞から考えることになって、歌詞に出てくる「left」「right」から真っ先に頭に思い浮かんだのが「左心房」「右心房」で。調べてみたら、「心房」は英語で「アトリウム」だと知って、それで決まりました。一番タイトルに意味がない曲かもしれない。笑

對馬:一番意味がないのに、意味を見出そうとしてた…。笑

Miraco:曲作りの面で言ったら、かんちゃんが適当に引いてたシンセに、私が適当に歌をつけたら完成してしまって。

對馬:今作は良い意味で「適当」ですね。

Kantaro:凝る部分は頑張って凝りすぎて…みたいなところは、ちょっとあるんちゃうかな。「さあ、がっちり曲を作ろう」っていうよりは、誰かがさらっと弾いてるフレーズとかYuseiさんが叩いてるドラムとかに秋田が適当に合わせたり、Ujiくんが私のギターに合わせたりして、気づいたら出来てた…みたいな。そういうのは多々ありましたね。

Miraco:多々ね。多々すぎるくらい。

Kantaro:ただ、そこからが難しい。

Uji:きっかけとしてはそういうのが多いけど、「いざ形にしよう」ってなると時間と体力を相当使ったかな。だから、みんな「適当」って言ってるけど、あんなに頑張ってたのにそれで良いんですか…?

一同:笑

Yusei:実際、採用率は低いからね。全部を作ってる訳じゃない。

Miraco:ほんとはUjiくん発祥の曲もあったけど、今回は違うかなってなったりとか。でもアルバムのためになったし、寄り道できて良かった。

對馬:ちなみに「An Atrium」が建築関係という前提で考えていた質問ではあるけど--Miracoは自分の建築関係の仕事が音楽に還元されることはあったりしますか?

Miraco:レコーディングではあんまりないけど、ライブの時はあるかな。もちろんPAさんにお願いするのが大半ではあるけど、やっぱり(ライブハウスは)箱の中だから、頭の隅で空間を組み立ててる意識はあるかな。あ…でも、事務作業に関しては今回めちゃめちゃ活かされましたね。

Uji:そっちか〜!

一同:笑

Miraco:私の仕事って段取りが大事なので。だから、もっと頑張らないといけないけど、段取り系は前より得意になったかな。お金の計算とかね。建築というよりは事務的な部分が活かされてる。笑

對馬:いや、めちゃくちゃ大事だと思います。

Miraco:でも、それはみんなも一緒かな。

Uji:そうですねえ。社会人、やもんねえ。

Miraco:みんなそれぞれ役割を果たして頑張ってます。

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