Posted on: 2021年2月14日 Posted by: 對馬拓 Comments: 0

1991年にリリースされ、シューゲイザーの金字塔を打ち立てたMy Bloody Valentineの2ndアルバム『Loveless』。2021年で30周年を迎える本作を記念し、弊メディアでは「My Best Shoegaze」と題した特集記事を不定期で連載する。SNS上の音楽フリークやライター、さらにはアーティストに至るまで、様々なシューゲイズ・リスナーに各々の思い入れの強い作品を紹介していただく。

Vol.1は、弊メディア主宰、及び音楽ライター/編集者として活動する、對馬拓の5枚。

■ Lovesliescrushing – Bloweyelashwish(1993)

Label – Projekt Records
Release – 1993/07/07

90年代から現在に至るまで活動を続ける異形のドラムレス・シューゲイザー、その始まりを告げた名盤1stアルバム。UKで生まれたオリジナル・シューゲイザーが、海を渡りUSで変容を遂げた一端を伝えるという意味においても、歴史的価値が非常に大きい作品と言える。極限まで抽象化された音像は、ドローン・ミュージックや現代音楽の影響が色濃く表出しており、あらゆる邪念を無効化し夢と現の境目をも融解させる。意訳すれば、入眠BGMに最適、といった具合だ。

■ Ringo Deathstarr – Colour Trip(2011)

Label – Club AC30
Release – 2011/02/14

UK由来の正統派シューゲイザーにUS由来のパンクやヘヴィー・ミュージックの影響を織り交ぜたダイナミックなサウンドと、ベースとヴォーカルを務めるアレックス嬢の美貌によって、現行シューゲイザーの王座に君臨する彼らが放った記念すべきデビュー・アルバム。文字通り再生すればいつでもトリップできる甘美な中毒性に満ちており、今でも特に愛聴する一枚。バレンタイン・デーにリリースしたのも意識してのことだろうか。そして、今年でちょうど10周年。

■ Fleeting Joys – Speeding Away to Someday(2019)

Label – only forever recordings
Release – 2019/12/13

まさしく「MBVの後継者」という言葉が相応しい直系のシューゲイズ・サウンドを初めて聴いた時の衝撃は忘れない。しかし、出会った頃にはとっくに過去のバンドだった彼らがリアルタイムでリリースした新作は、その衝撃を軽々と上回ってしまった。2ndアルバムからおよそ10年という沈黙を突き破る轟音は、キャリアハイの更新を高らかに宣言している。爽快だ。

それにしても、ここまでMBVサウンドを踏襲しながらオリジナリティを獲得しているのは稀有な事象のような気がしてならない。

■ Juvenile Juvenile – Our Great Escape(2014)

Label – FLAKE SOUNDS
Release – 2014/09/24

日本のシューゲイザーを少しずつ聴き始めた大学生の頃に「1/f揺らぎ」で存在を知り、「Forget Me Soon」で鳴らされるリフレインの洪水に衝撃を受け、すぐにCDを買った思い出のアルバム。男女混合のウィスパー・ヴォイス、リヴァーブが心地良いドリーミーなギター、アタック感のあるリズム隊、ほとばしるセンチメンタリズムと疾走感。もう全てがツボ。あらゆるシューゲイズ・ポップの中でも群を抜いた完成度を誇り、その類の中では未だにこのアルバムを超える作品には出会えていない。

■ Westkust – Westkust(2019)

Label – Luxury Records / Run For Cover
Release – 2019/03/01

スウェーデンの名門レーベル、Luxury Recordsが誇る北欧シューゲイザーの2ndアルバム。キリッとしたクリアな轟音が耳を突き抜けていく感覚を一度味わってしまったが最後、定期的に摂取しなければならない身体になってしまって久しい。キャッチーなメロディや前作よりさらに磨きのかかったギター・ワーク、以前の男女混声からジュリアをメイン・ヴォーカルとする編成への移行などが功を奏し、見事に現行シューゲイズ・ポップの大本命に躍り出た傑作。

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文/編集=對馬拓(Sleep like a pillow 主宰/ライター)

Author

對馬拓
對馬拓Taku Tsushima
Sleep like a pillow主宰。編集、執筆、DTP、イベント企画、DJなど。ストレンジなシューゲイズが好きです。座右の銘は「果報は寝て待て」。札幌出身。