Posted on: 2021年1月25日 Posted by: 對馬拓 Comments: 0

私が常に道を切り開いて行かないと、みんなとは一緒にいられないから

── では、「amber」サイドについて、もう少し深掘りします。「amber」は、すごく切なくなる曲ですよね。感傷に浸る感じというか。

これも、今までの作品でやってこなかったテイストというか、ちょっとラフなスケッチみたいな感じのアコースティックの曲で。「スタジオワークの結晶」って言っていただいた通りなんですけど、本当に一人きりで作りました。

──「come for me」は今作唯一の英語詞ですよね。

最初から英語詞にしようというより、落とし込める言語がたまたま英語だった、っていう。さらっとしてて、スッと心に入ってくる感じになりました。

── 時々聴こえる鳥の鳴き声みたいな音って、何で出してるんですか?

これ、ギターのフレットの移動の音がすごく良い感じに入ったんですよ。リヴァーブがかかってるのかな? それで良い感じになってて、そのまま入れました。鳥の鳴き声みたいですよね。

── カモメっぽい。

自分の中では、明け方というか、太陽の光が差してきた早朝のイメージです。確かに、カモメ飛んでそうですよね。メンバー内でも「鳥みたいだよね」って言ってて。

──「come for me」のアウトロがフェードアウトした後にもSEが入ってますよね。個人的には古びた遊園地のような感じがしました。

壊れたメリーゴーランドというか。「amber」サイドは古い宝石みたいな、アンティークなイメージなんですよね。

──「アリスとテレス」は、また新しい感じの曲ですね。

あ、でも曲自体は古いんですよ。ちなみに「あめ」もそうだったりします。アレンジは変えて、ギターも加えたりしたんですけど。それが逆に新しく感じたのかもしれないですね。

── じゃあ、前作でいう「mirrors」に近いポジションですかね。

時期的にもそうですね。個人的に、今作で「アリスとテレス」が一番好きなんですよ。

── へ〜!

意外かもしれないですけど。笑 ずっと音源化したくて、思い入れが強い曲なので、ようやく作品に入れられたっていうのが嬉しかった。SPOOLには珍しく四つ打ちっていうのもまたいいですよね。

── 確かに、言われてみたら珍しいかも。

そうなんですよ。でも、あんまり四つ打ちっぽさを感じない平坦なメロディで、よく聴くと気づくっていう感じが気に入ってて。笑

── やっぱりちょっとひねくれてる。笑

曲の短さとか、アウトロの「あっ、終わってしまった」っていう切なさとかも好きですね。

──「amber」サイドは、「cyan」サイドと比べると明るいと思うんですけど、ラストの「天使のうたごえ」は、純粋なハッピーエンドではないような印象を受けました。

アルバムの構成の話にも繋がるんですけど、主人公がアルバムの世界に触れた後、「ending」でまた階段を登ってドアを開けて、元の世界に戻っていくじゃないですか。でも実際、現実って何も変わらないんですよ。それでも、ちょっとだけ、0.5歩でも、このアルバムの世界に触れて、踏み出せなかったことを踏み出せるように、優しい気持ちになってもらいたいっていうのがあるんですよ。鎮痛剤のような。…「モ ル ヒ ネ」ですよね。笑

──「モ ル ヒ ネ」ですね。

現実を変えることはできないんだけど、それでも、聴いてる瞬間は楽になれて、もうちょっと生きてても良いかなって思えるような音楽。本当に……諦念ですよね。

── 諦念。

受け入れて、生きていく。

── 個人的に「天使のうたごえ」の、「おどろう/きみとなら/こわくない/ひとりで」っていうフレーズは、Mr.Childrenの「and I love you」の歌詞を思い出しました。「もう一人きりじゃ飛べない/君が僕を軽くしてるから」。

私もそこの歌詞はすごく好きですね。なんというか……一緒にバンドをやってるけど、やっぱり孤独なんですよ。この曲を最後に持ってきたのもそういうことで。人は一人じゃないですか。逃れようもなく。「Sonic Disorder」(Syrup16g)の歌詞じゃないですけど。笑 それを受け入れて生きていく。でも、みんながいることで私も軽くしてもらってるし、飛べる気がする。だから、ちゃんと一人で歩いていけるよっていう。一人で歩いて行かないとね…。私が常に道を切り開いて行かないと、みんなとは一緒にいられないから。「こっちだよ」って導いていけるように一人で生きていくっていう。「天使のうたごえ」は、そういう曲です。

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自分たちでなんでもできるっていうDIY的な部分はすごくありました

Author

對馬拓
對馬拓Taku Tsushima
Sleep like a pillow主宰。札幌出身。音楽ブログの運営、ディスクユニオンのスタッフなどを経て、現在はライター/編集者が本業。主な実績は、揺らぎ、SPOOL、pollyなど国内シューゲイザー・バンドへのインタビュー、Tapeworms『Funtastic』ライナー執筆など。座右の銘は「果報は寝て待て」。