Posted on: 2022年2月11日 Posted by: 對馬拓 Comments: 0

文=對馬拓 
写真=Yusuke Masuda 

「良いライブの条件」とは何だろうか、ぐるぐる考えてみる。音響が優れていること? いや、たとえ設備が最小限でも良いライブができるバンドはいるだろう。では、会場が大きいこと? いや、当然ながら良いバンドは場所を選ばないはずだ。それなら、目を見張るようなテクニックを持っていること? いや、単純なコードでも名演は生まれる。ならば、楽器や機材が充実していること? いや、どんな編成だとしてもそれは良し悪しを決める絶対的な基準にはならない。

問いに対する答えはシンプルだ。なぜなら、良いライブは「バンドが最高の状態」でさえあればできるのだから。2022年2月6日、pollyは間違いなく「最高の状態」だったはずだ。そして、その状態のままステージに立てば、自ずと最高のライブになる。越雲龍馬(Vo. Gt. Pg.)をして「やり切った」「遺作になっても良い」とまで言わしめるアルバム『Pray Pray Pray』を引っ提げたツアーの千秋楽、渋谷WWWにて、彼らはそれを真正面からしっかりと証明してみせた。

──何もかもが違っているような気がした。2021年1月31日、約1年前も同じ場所で同じバンドを観ているはずなのだが、単に時間が流れたから、違う楽曲を演奏しているから、あるいは4人が真っ白な衣装に身を包んでいるから、といった理由では到底説明できない何かがあった。それは決して違和感ではなく高揚感に似たもので、一曲目に演奏された「Life goes on」が始まった瞬間から、その感触は芽生えていた。そしてふと、越雲の「アルバムの一曲目でも合いそうだと思っている」という言葉を思い出す。自然と胸が熱くなる。

ライブ前半、その高揚感は驚きと共に加速していった。なぜなら、『Pray Pray Pray』のリリースツアー、それも最終公演であるはずのこの場所で、『Clean Clean Clean』の楽曲を立て続けに披露したからだ。「生活」「哀余る」「美しい」「花束」──半径数十センチの世界に正解を求めていた、かつてのpollyが、かつての越雲が生み出したメロディ、サウンド、リリック。しかしどの楽曲も、これまでとは聴こえ方がまるで違う。また一つ思い出す。越雲は『Clean Clean Clean』と『Pray Pray Pray』は表裏一体、一番近いアルバムだと語っていたではないか。過去と現在を接続し、答え合わせをしていくような時間が流れていく。

この日、越雲はMCで「変な感じだ」と苦笑いしていたように、珍しく緊張する姿も見せていた。過去最高のアルバムのツアーを経て迎えた最終日とあって、並々ならぬ想いが込み上げていたのは想像に難くない。彼自身も高揚感を抱いていたはずだ。しかし、それと同時に「今日という日を終えること」を惜しむ気持ちも強く滲ませていた。MCの度に「終わってしまう」と口にしながらステージを歩き回る越雲。飯村悠介(Gt. Syn.)も「(ツアーは)あっという間だった」と振り返っていたが、ツアーがいかに充実したものだったのか、その一端を垣間見た気がした。

中盤は、「Daybreak」「Farewell Farewell」「窓辺」と『Pray Pray Pray』収録のミディアム・ナンバーを中心に披露。特に「窓辺」の流麗なメロディとハイトーン・ヴォイス、誰かを想う嘘偽りのない言葉と眼差しは、心の奥底にこびりついたわだかまりを浮かせて洗い流していくようだった。

この命が縮まろうとも
その寝顔が続けばいい
そう願ったこの身を見て
あなたは何を思うの

──「窓辺」

そして、越雲が「やるぞ!」と声を張って始まった「沈めてくれたら」から「Laugher」「A.O.T.O.」「狂おしい」までの流れは、何かが憑依したように、全てを手に入れたように、ひたすらに美しかった。耳に直接シールドを挿し込んだかのごとく轟音で脳が揺れる。引き裂かれるギター、空間を叩き割るドラム、青く燃えるベースが、抑圧されて、飲み込んで、無理矢理ないものとしていた様々な感情を一気に逆流させていく。転げ回るようにギターから轟音を放つ飯村、終始クールにベースを弾き倒す須藤研太(Ba.)の姿が目に焼きつく。そして「狂おしい」のラスト、高岩栄紀(Dr.)のドラムの一撃と共にステージ後方のスクリーンが白く切り替わった瞬間、高揚感は頂点に達した。

本編のラストは「Light us」。ボウイング奏法(ヴァイオリンなどの弓でギターを奏でる奏法)が光るこの楽曲の終盤、越雲が声を詰まらせるような場面もあった。終わってしまう。余韻を引き伸ばすかのようにアンコールで披露した「東京」「Starlight Starlight」まで、とにかく完璧だった。越雲はこの日が終わってしまうことに対して最後まで惜しみ続けた。終わってしまう、終わってしまう、無常にも。しかし彼らは、やり切った。全てを出し切ったからこそ、惜しむのだ。

今、彼らにはどんな景色が見えているのだろうか。来たる4月で結成10周年を迎えるpollyが向かう先を、まだまだ共に進んで行きたいと思う。

* * *

polly Release Tour「Pray Pray Pray」Final Oneman
2022/02/06 (Sun)
Shibuya WWW

1. Life goes on
2. 生活
3. 愛している
4. 哀余る
5. 美しい
6. 泣きたくなるような
7. 花束
8. Daybreak
9. Farewell Farewell
10. 窓辺
11. 沈めてくれたら
12. Laugher
13. A.O.T.O.
14. 狂おしい
15. Light us
En1. 東京
En2. Starlight Starlight

関連記事:
polly 2020年を総括する渾身のワンマン「Fourteen House」
polly『Pray Pray Pray』インタビュー 漠然と生きられない時代に越雲龍馬が紡ぐ、等身大の言葉と希望

■ Information

polly 10th Anniversary Oneman「Ours.」
2022/04/14 (Thu)
TOKIO TOKYO

Author

對馬拓
對馬拓Taku Tsushima
Sleep like a pillow主宰。札幌出身。音楽ブログの運営やディスクユニオンのスタッフなどを経て、現在はライター/編集者が本業。主な実績は、揺らぎ、SPOOL、pollyなどへのインタビュー、Tapeworms『Funtastic』CDライナー執筆など。座右の銘は「果報は寝て待て」。