Posted on: 2022年8月21日 Posted by: 對馬拓 Comments: 0

バンドは生きている。pollyからメンバーが脱退すると知った時、嫌な予感が全くよぎらなかったわけではない。この先どんな未来があるのか、期待が不安に、不安が期待に反転し続けるような心地がしたものだ。しかし、結論から言えばそれは完全に杞憂だった。

2月に満を持して傑作3rdアルバム『Pray Pray Pray』をリリース。4月には10周年ワンマンをもってメンバー2人が脱退。そして7月、新体制初ワンマン「MORNINGRISE」にて新メンバー、志水美日(Key. Cho.)が加入。ここまで半年足らずだ。その間、pollyが歩みを止めることはなく季節は目まぐるしく過ぎたが、その視線は常に先を見据えている。

今回、また新たな地平へと歩み始めたこのタイミングで、3人に率直な心境を聞くことができたのは貴重かもしれない。もちろん未定の部分も多く、越雲は相変わらず苦悩しているようだが、“これからのpollyは確実に良くなる”というポジティブな空気感は間違いなく漂っていた。プレッシャーという名の最大限のエールを送りつつ、pollyの行く末に期待したい。

インタビュー/文=對馬拓
写真=木村篤史

* * *

■ いい意味でピリつくというか、場が締まるというか

── まず、7月22日に新代田FEVERで開催された新体制初ワンマン「MORNINGRISE」を振り返ろうと思います。みなさんそれぞれ手応えを感じていると思いますが、ライブを終えた心境はいかがでしょう。(※本稿に掲載された写真は全てライブ当日のもの)

越雲龍馬(Vo. Gt. Pg.):めちゃくちゃ楽しかった、っていうのが一番初めに浮かぶ言葉なんですけど、同時に今後もあの日以上のライブをしないといけないっていう不安感に襲われています。笑 だから、ライブ当日のことよりもその先のことをずっと考えてますね。もっと良くなるようにするにはどうすべきか、みたいな。

── あの日をきっかけに掴んだことはきっと色々ありますよね。

越雲:今までにはない“ライブ感”もあったし、11年目になって、やっと“バンド”という形になったというか、誤解を恐れずに言うと「初めてちゃんとバンドやってるな」っていう印象で。もちろん今までがバンドじゃなかったわけではないですけど、自分が求めていたバンド像ってこれだったんだな、っていう気持ちがあります。

── かなり前向きな感触があったんですね。

越雲:とてもポジティブな気持ちです。

越雲龍馬(Vo. Gt. Pg.)

── 高岩さんは終えてみてどうでしょうか?

高岩栄紀(Dr.):まず越雲さんと同じで、めちゃくちゃ楽しかったですね。自分はちょっと人見知りなので、3人で入る初めてのスタジオ練習もすっげえ緊張して縮こまってたりしたんですけど、本番になって、演奏とかステージングとか、みんながすごい引っ張ってくれて、安心して演奏できて。初めての感覚でしたね。特に辻さん(辻友貴/cinema staff)が引っ張ってくれた感じがして。メンバーと目を合わせて演奏することってそんなに多くないんですけど、今回は結構アイコンタクトを取ったりして安心感がありました。

── 珍しくMCもやられてましたよね。

高岩:MCは頑張ったと思います。笑 ほんとにバンドを続けて良かったなって。いいこと言えたな〜って、今でも思ってますよ。

越雲:そうでもないよ?笑

高岩:いや、いいこと言えたと思いますよ??

一同:笑

越雲:今後MCは栄紀くんにお願いするので。

高岩:いやいやいや。笑

高岩栄紀(Dr.)

── 志水さんは正式に加入して初のライブとなりましたが(※ライブ終盤に加入を発表)、終えてみてどうでしょうか。

志水美日(Key. Cho.):正直、色々と間に合わせるのがギリギリだったので不安は大きかったんですけど、自分としてはどうにか本番は練習よりも良いパフォーマンスができたので、達成感があります。あと、セットリスト(以下セトリ)は私が最初にざっくり考えたものをベースに組んだので、それでお客さんから良い反応をもらえた嬉しさがすごく大きかったです。自分がこれまで他のバンドでやってきたライブを含め、自分にとってすごく楽しいと思えるライブができました。

── セトリを志水さんが考えたということで、やはり越雲さんと高岩さんとしては新鮮な感じでライブができたのでしょうか。

越雲:かなり新しいセトリの組み方だなと思いましたね。

高岩:越雲さんも俺も一応考えたんですけど、やっぱどうしても同じような、いつも通りのセトリになっちゃうんですよね。だから新鮮で面白かったです。

志水:私はpollyのライブをちゃんと昔から観てきたわけではなかったので、フラットな状態で曲を自分なりに捉えた上で、「どうしたら一番いい聴こえ方がするのかな?」という基準で組んだセトリで。逆に、これまでどういうふうにしてたのか良くも悪くも分からなかったからこそ、より新しさみたいなものを出せたのかなと思います。

── ある種“外部プロデューサー”的な視点もあったからこそ、かもしれないですね。他に志水さんが加わったことで新しいと感じた部分はあったりしますか?

越雲:たくさんあります。まず、音楽的な部分以外のところで話すと、志水さんはこう……見た目も相まって、ちょっと怖いじゃないですか。

── 出た。笑(※越雲は志水のことを度々「怖い」と形容する)

一同:笑

越雲:なので、いい意味でピリつくというか、場が締まるというか。それで、よりスタジオワークとかも密なものになっていったと思います。志水さんは性格が真面目で周りを見れる人なので、我々にとっては良い刺激になってます。

志水美日(Key. Cho.)

高岩:今までは同期を使うところが多かったので、機械的といえば機械的なライブになるこも多かったんですけど、志水さんが加わって、同期でやってた部分をキーボードで補ってくれたことでライブ感が増して、良い感じになったかなって思います。あと、越雲さんと志水さんのコーラスの相性が抜群にいいんですよね。それも武器になっていくんじゃないかなと思います。自分ができないコーラスの部分もいい感じにやってくれるので、そこは本当に助かります。笑 ドラムを叩きながらコーラスもやるとなると難しいところもあったので。

──『Pray Pray Pray』に収録された「Laugher」のコーラスに志水さんが参加していたかと思いますが、今後あれを超えていくコーラスが音源でも聴ける気がしています。

志水:頑張ります。

── あと、同期を補うという部分にも繋がりますが、“専任のキーボーディスト”が一人加わったというのは、かなり大きな変化だと思ってるんです。それによって今後の音楽性にも大きな影響を与える気がして。その辺りのヴィジョンってあったりしますか?

越雲:今までやってこなかった、鍵盤でアルペジオとかのリフをメインで作る曲があっても面白いなと思ったりしますし、それこそSigur Rósの「Hoppipolla」みたいな曲──あれ、頭から鍵盤でリフを作ってると思うんですけど、そういうアプローチも良いなって思いますし。僕、鍵盤の知識はほとんどなくて、本当にコードしか打ち込めなくて。志水さんはMO MOMAだったりで培ってきた知識や技術があると思うので、鍵盤のことはいい意味で丸投げしちゃっていい気がしますね。でも、僕はそれよりも声が武器だと思ってるので。羊文学の最新作(『our hope』)とか、コーラスワークがすごくいいじゃないですか。そういうアプローチもできるといいなと思ってます。

── 確かに。その辺り、志水さんはどう感じていますか? 曲作りも具体的に進んでたりするのでしょうか。

志水:「このフレーズ入れてみようかな?」とか、コーラスも「こういうラインどうですか?」みたいにやってみたりしてるんですけど、これまで自分のバンドに対しては自分自身のアイデアがそのまま組み込まれることが意外とあんまりなくて。音楽を主体的に鍵盤で表現するのって実は初めてのことなので、挑戦だなっていう気持ちがすごくあって。「どういうふうにpollyらしさを残しつつ、自分らしさを出せるのか」っていうのが今の課題です。でも音楽的なルーツが元々近いので、ヘンテコなことにはならないと思うんですけど。なので、面白い化学反応が起きたら良いなと思いつつ、馴染むような感じで上手くできたらいいなって。期待と不安が半分半分っていう感じで取り組んでいるところです。

── シンプルに今後のpollyが本当に楽しみで。やっぱり『Pray Pray Pray』で、あの4人での音が完成したのかなと思ってて、じゃあここから新しいpollyがどうなっていくかっていうのは、リスナーとして、いちファンとして、すごく楽しみですね。

越雲:もっと良くなりますよ。現状、何曲かデモとか作り始めてるんですけど、前作をベースにした作曲方法でやってるので、それに新しい風というか、志水さんが入ってくれたことによってできる幅も広がりましたし。前の方が良かったって思ったらやめます。笑 やってる意味ないので。

── 前よりも良いものを作れないと嫌だなっていう気持ちは、全然フィールドは違いますけど僕も感じることではあるので。でも絶対良くなるはずなので、楽しみにしてます。

高岩:絶対に良くなっていきますよ。

越雲:頑張ります。笑

■ やりたいと思ったからやるっていう、シンプルな感じ

── そもそも、志水さんがどういった経緯で加入に至ったのか改めてお聞きしたいです。元々越雲さんと志水さんが関わりがあったところから交流が始まったんですかね?

志水:元々は6〜7年前くらいにLILI LIMITとpollyの対バンで知り合って。バンド的には別にめっちゃ近いわけでも遠いわけでもないみたいな関係性で。MO MOMAになってから最初にライブに誘っていただいて、コロナの本当に最初の方に一緒にやろうってなったのが飛んじゃって、結局できなくて。越雲くんと個人的に連絡を取るようになったのはそれくらいからですかね。

志水:きっかけは(越雲が)「polly以外で音楽をやりたい」みたいなことをSNSで言ってたのを見て、面白そうだなと思って連絡して、そこから「音楽を新しく一緒にやろう」っていう話を色々して。でも、なかなか他のメンバーと時間が合わず、時間だけが経っていった中で、「Laugher」のコーラスの依頼を受けて、やりとりして、サポートも決まって……みたいな感じですかね。気づいたらpollyに近づいてた感じがあります。越雲くんと音楽をやってみたら面白いだろうなっていうのは元々潜在的に思ってたので。1月のツアーにMO MOMAが参加させてもらった時に、一回急遽「Laugher」でコーラスをやってすごくしっくりきたというか、一緒にステージに立ってる感じがすごい良くて、誘われた時も絶対良くなる気がして、スッと入りました。

── 加入自体は越雲さんから声をかけたのでしょうか。

越雲:4月に前のメンバー2人が抜けて、5月にライブに誘われたんですけど、メンバーもまだ揃ってないですし、最初は弾き語りでやろうかなみたいに思ってて。でも2人になってからの一発目が弾き語りっていうのは、ファンの方々に不安感を持たせてしまうかなって。それで志水さんを誘って、アコースティック編成でやろうかってなったんですね。で、その日のライブが終わった時に「志水さん、入りませんか?」って言ったら「入ります」ってあっさり言われて。あれ、この人ふざけてるんじゃないかな?って。笑

一同:笑

越雲:僕が誘ったのを冗談だと思ってるのかなと思って。笑 でも次の日に電話して「本当に入ってくれるんですか?」って聞いたら「入ります入ります」って感じで。あ、すごく強い人が入ってくれるんだって思いました。

志水:「やったらいいだろうな」っていう、意外とシンプルな気持ちというか。あと、アコースティック編成の時のリハとかしてる中で、この二人、居心地いいなって思って。今までそんなに喋ってたわけではないんですけど。私、かなり友達とか狭いタイプなので、苦手な人間っていっぱいいて。笑

一同:笑

志水:無理な人っていっぱいいるんですけど、2人は一緒にいて嫌じゃないし普通に楽しくて。2人は「緊張する」ってずっと言ってたんですけど。笑 私は一切緊張しなくて。すごい馴染むなと思ったので、違和感もなく迷いもなく「入ろう」って普通に思いました。

越雲:ありがとうございます。

志水:なんだろうな、普通に考えたらすごく大きな決断なのかもしれないけど、私としてはいい意味で、そんなに重たいことだとは思ってないというか。やりたいと思ったからやるっていう、シンプルな感じ。それで「あ、はい」みたいな軽い返事をしちゃいました。即答だったから信用度がなかったかもしれないですけど。笑

── すごく自然な流れだったのが伝わってきます。ちなみに、加入して制作も少しずつ始まっているということで、レコーディングも予定されているとのことですが、それはもう次回作の制作ですかね?

越雲:そうです。

── まずは新しい顔ぶれで自己紹介的な一枚を作ろう、っていう。

越雲:そうですね。全曲シングルカットできるくらいにしていくつもりです。僕は作ってる側なので全部良いとは思ってるんですけど。でもなんか、ダメなんじゃないかって……。

── いやいやいや。笑 でも『Pray Pray Pray』でやりきったっていうのは以前のインタビューでも聞いてはいたので、そこを超えていくのは相当ハードルが高いのかなという気はしています。

越雲:まずはメンバーとかチームの人とか、近しい人たちに愛される作品を作らなくちゃいけない、というか作りたいなって思って。でも「こいつまたBPM遅い曲作りやがって」っていう雰囲気もある気がするし……。笑

── そんなことないと思いますけどね。笑

越雲:ハードルが高い分、不安感とか恐怖心が強いので、たまには構ってください。笑

■ 前よりも良くなると信じて続けている

── 初ワンマンはcinema staffの辻友貴さんと、元PELICAN FANCLUBのカミヤマリョウタツさんのお2人をサポートに迎えた5人体制でしたが、今後のライブでもサポートメンバーを呼ぶことになるのかなと。メンバーは毎回固定ではないのでしょうか。

辻友貴(cinema staff / Gt.)

越雲:毎回同じっていうのは物理的にも難しくなるとは思っていて。ギターがKOTORIの​​上坂仁志くんになったりとか、ベースがIvy to Fraudulent Gameのカワイリョウタロウくんだったりとか、固定はしないけど今発表されてるメンバーでやっていきたいって感じです。しかも僕はギターを弾かなくても良いかなと思ってたりもするので、2人ギターを入れたりするかもしれないです。めんどくさいので、ギター弾くの。笑

一同:笑

── 基本は5人体制なんですかね?

越雲:基本そのつもりですね。

カミヤマリョウタツ(ex. PELICAN FANCLUB / Ba.)

── 音源の制作は3人で進める感じなのでしょうか?

越雲:ベースとなるデモとかを作る段階では3人でやっていくつもりなんですけど、レコーディングに関しては、曲によってはサポートの方に弾いてもらうのも良いなって思ったりもします。でもまだ分かりません。

── 新体制での活動が始まったばかりで手探りの部分も多いですよね。では、今後の予定としては年内にリリースの発表がある感じでしょうか。

越雲:それも分かりません。笑 できれば「年度内には出したい」っていう気持ちはあります。

── そこは納得がいくところまで突き詰められないと出せないですよね。

越雲:そうですね。不安でいっぱいです。

── でも、志水さんがかなり強力にバンドを引っ張ってくれると思いますし。

志水:どうにか良い効果を生んで、ちゃんと「新しいpollyだな」ってなるようにするのが私の役割だと思っているので、頑張ります。

越雲:今までは僕がバンドを引っ張ってきたのかなとは思うので、音楽的にはこれからも僕が引っ張っていけたら良いなと思いつつ、精神面とか心の問題は志水さんにおんぶに抱っこで……と思ってます。笑

志水:自然とそうなると思います。ふふふ。サポートメンバーもしっかりしてる方ばかりで、スタジオも楽しくやれてるので全然不安はないし、私は誰かが落ち込もうが怒ろうが怯むタイプではないので、なんとでも支えようとは思ったりしてます。なので全然心配はしてないです。

── めちゃめちゃ心強いですね。では、志水さんには“肝っ玉母ちゃんっぷり”を発揮していただいて……。

一同:笑

志水:その感じは否めないですね。笑

── では最後に、今後の活動に向けて高岩さんから一言いただけますか。

越雲:笑

高岩:えーと、そうですね……。前よりも良くなると信じてpollyを続けているわけなので…もっと絶対にかっこよくなると信じているので、ライブを観に来てほしいですね。

── 本当に「今のpollyをライブで観てほしい」っていうのは僕も思ってることなので、今まで観たことない人にも観てほしいし、4人時代しか観てない人にも観てほしいと思いますね。

高岩:サポートメンバーも毎回同じではないっていうのも面白いところだと思うし、それはやってる側としても面白いことなので、頻繁に足を運んでほしいと思ってます。

◯2022年8月12日 Zoomにて

* * *

■ Profile

polly(L→R)

志水美日 Mika Shimizu(Key. Cho.)
高岩栄紀 Hideki Takaiwa(Dr.)
越雲龍馬 Ryoma Koshikumo(Vo. Gt. Prog.)

■ Information

ZINE『new you』Vol.0

◆ 特集
polly

◆ 収録内容
Interview:漠然と生きられない時代に越雲龍馬が紡ぐ言葉と希望
Disc Review:2015 – 2022
My Best Shoegaze:越雲龍馬の5枚

◆ 執筆陣
小野肇久(DREAMWAVES)
鴉鷺(Sleep like a pillow)
對馬拓(Sleep like a pillow)

◆ デザイン
seisui(tokyo zuan / re:lapse)

◆ 仕様
A5サイズ / 16ページ
※意図的にホチキス留めしておりません

◆ 価格
¥1,000(税込)
各種レーベル/ディストロ/店舗にて販売中

創刊号となるVol.0は、新体制として再出発するpollyを特集。弊メディアにて公開した最新インタビューや越雲が自ら選出/執筆した「My Best Shoegaze」に加え、計6作品のディスクレビューを書き下ろし。

関連記事:
■ polly『Pray Pray Pray』インタビュー 漠然と生きられない時代に越雲龍馬が紡ぐ、等身大の言葉と希望

Author

對馬拓
對馬拓Taku Tsushima
Sleep like a pillow主宰。札幌出身。音楽ブログの運営やディスクユニオンのスタッフなどを経て、現在はライター/編集者が本業。主な実績は、揺らぎ、SPOOL、pollyなどへのインタビュー、Tapeworms『Funtastic』CDライナー執筆など。座右の銘は「果報は寝て待て」。