Posted on: 2020年9月16日 Posted by: 對馬拓 Comments: 0

Label – Morr Music 
Release – 2002/11/04 

ドイツのエレクトロニカ・アーティスト、Michael Lueckner(ミハエル・ルックナー)のソロ・プロジェクトとして始動したGuitarの1stアルバム。

後続への影響の大きさを考慮すると、My Bloody Valentineはいわゆるゼロ年代以降の「エレクトロ・シューゲイザー」の潮流を「Soon」の時点で予見していたとも言えるが、まさしくGuitarはその可能性を大きく広げ、揺るぎないものとして証明している。無機質なダンス・ビート、耳を埋め尽くすフィードバック・ギターのリフレイン、そして揺蕩うウィスパー・ヴォイスがとてつもないトリップ感覚を生み出す様はとにかく圧巻だ。全編に渡って展開されるコラージュ的なサウンド・アプローチやクリアな音像は、エレクトロニカ出身ならではだろう。

ただ、ケヴィン・シールズを特集した「ギター・マガジン」の2021年6月号において、実は『Loveless』がサンプリングを駆使したアルバムだったことが、ケヴィン本人の口から詳細に語られている。確かに「Soon」のビートがヒップホップ由来だったことを踏まえれば腑に落ちる話ではあるが、その事実は筆者を含め、多くのリスナーに驚愕をもって迎えられた。そんな『Loveless』のある意味コラージュ的な手法を、Guitarは知ってか知らずかエレクトロニカ経由で受け継いでいる--そのことを念頭に置くと、本作も違った聴こえ方がするかもしれない。

また、日本人ヴォーカリストであるayako akashibaをフィーチャーしている点で、同年代のAsobi Seksuとも共振する。もっと言えば、本作と同年の2002年、スーパーカーがエレクトロニカに接近したドリーミーなサウンドを展開する『HIGHVISION』をリリースしている事実も見逃せない。こうして勝手に結びつけてしまうのは筆者の悪い癖かもしれないが、単なる偶然と片付けるのはもったいない気がしてならない。

text by osushitabeiko

Author

對馬拓
對馬拓Taku Tsushima
Sleep like a pillow主宰。編集、執筆、DTP、イベント企画、DJなど。ストレンジなシューゲイズが好きです。座右の銘は「果報は寝て待て」。札幌出身。