
ボカロP/シンガーソングライターの世界電力が、アルバム『贈り物をさがして』をSiren for Charlotteからリリースした。
Siren for Charlotteは、ミュージック・マガジンやレコード・コレクターズなどで執筆する音楽ライターで、『ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイド』(DU BOOKS)の監修/編集も務める門脇綱生が提唱する、新時代に向けた審美眼/コレクトである「遠泳音楽」(Angelic Post-Shoegaze)をテーマとしたレーベル。Sleep like a pillowなど各所で音楽批評、ディスクレビュー、インタビューなどの活動を行う音楽ライター/歌人の黑田依直(旧:aro)が共同主宰として参加している。
世界電力の最新アルバム『贈り物をさがして』は、Siren for Charlotteの思想的な系譜を意識しながら、世界電力の実質的な1stアルバムとなることを踏まえた自選短篇集のような1枚。歌唱には重音テトSV、玄野武宏、ずんだもん、波音リツなどを使用。ゼロ年代の音の残響が、都市のざわめきの奥で静かに芽吹く、触れられなかった記憶となる。歪んだギターの余韻は、無垢な青と交わりながら、追想という名の明日をやさしく照らしている。
■ 世界電力 コメント
本作『贈り物をさがして』は、Siren for Charlotteの思想的な系譜を意識しながら、世界電力の実質的な1st Albumとなることを踏まえて、自選短篇集のように編纂されました。
本作品集を改めて俯瞰してみると、リードトラックである「ポストずんだロックなのだ」を円心に、2021年に発表された初期衝動的な2作品『ネバーエンドすべて』『どこかのかれら』から、本作品集への収録を前提に制作した新曲群である「煙の湊」「或」「the world is not mine」まで、描く情景や眼差すものに、手ざわりの似た情念が内包されているように感じます。
この作品集が、皆さまにとっての素敵な贈り物となれば幸いです。
■ Siren for Charlotte コメント
遠くゼロ年代のエモやメロコア、ポスト・ロック、そして下北沢のギターロックが遺した音の残像。それはもはや経験としてすら不確かなまま、都市の喧騒を駆ける誰かの、内部に沈積した未遂の記憶として、遠い未来の空白にほのかに発芽する。記憶とはしばしば、実在の追認ではなく、未来の予兆に過去の衣を纏わせる装置である。無垢の青に揺れる足取り、過剰に晴れやかな空、機械音声が奏でる非人称的な感傷。それらは、現実と非現実の接続点として、感情の深層を撹拌していく。
遠泳音楽のナラティヴ第1章にあたる、「光がすべてを照らしていたころ」とも共鳴するこの音楽は、経験の有無を超えて、人間という存在の深層に潜む「あったかもしれない過去」を静かに呼び起こす。照れ隠しのように歪みを帯びて、加速するギターの音色は、まるで記憶の不確かさそのものを音響化したかのように、陽光の下で透明な空気と融解してゆく。そこにあるのは懐古ではなく、追想という名の創造だ。凛然たるまなざしの先、音は誰かを未来へと駆動させる。かつて記憶したことのない明日を、いま確かに刻みながら。
■ Release

世界電力 – 贈り物をさがして
□ レーベル:Siren for Charlotte
□ 品番:SIREN:0020
□ 仕様:Digital
□ 価格:¥800
□ リリース:2025/05/16
□ トラックリスト:
1. ネバーエンドすべて / never end, departed
2. どこかのかれら / far away, farewell
3. 透き通るように / clear you, clearly
4. ことばに花束を / words and wounds
5. かせきセーター / empty empathy
6. ポストずんだロックなのだ / post-zunda-rock nanoda
7. 或 / or there
8. 煙の湊 / seaside sanatorium
9. the world is not mine
10. 宇宙のみなしご / -30-
■ Siren for Charlotte
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