Posted on: 2020年2月18日 Posted by: 鈴木レイヤ Comments: 0

Label – Self Released 
Release – 2016/12/18 

フランスのシューゲイザー・バンド、TapewormsのEP作品。bandcampの概要欄に書かれていること(※執筆当時)を見る限り、彼らはとにかくボケ倒しており、同等に尖ってもいる。

フライドポテトを食べること、スマッシュマウス(アメリカのパワーポップ~ポップパンク系統のバンド)を聴くこと、死霊のはらわたを見ること、ノイジーで幻想的、攻撃的だけど優しい音楽を作るのを頑張ること

Instagram(@tapewormsband)へ飛んでみると、紅一点のマーゴット嬢がぱっちり目を開いてあどけない変顔を見せていたり、3人で変なポーズをしていたり、半目の写真や蕎麦を食べている写真など、可愛らしいボケに全力投球しているようだ。が、なぜかLSD and the Search for Godにフォローされている。

もちろん無名のバンドをそこまで調べたのは、彼らがふざけていて面白いと思ったからではない。無論、音楽に対する投球が素晴らしかったからだ。この4曲入りEPの意味するものは大きい。

M-2「Lemonade」ではSwerevedriverのようなカッコよさがある。M-4「Tomorrow」にはAstrobriteが持つ眩しい風圧の様なメロディーがある。また、恐ろしく馬鹿げたことを言っていると承知の上で聞いてほしいが、このバンドにはスーパーカーの『スリーアウトチェンジ』の衝撃を持っている。

素晴らしいポップセンスと、若いバンドならではの良さ、好き勝手やる精神、素敵だと思う。これは、ジャンル外の音楽ファンを相手にしても戦えるシューゲイズだ。一瞬聴いただけでわかるはずだ、彼らは才能がある。 その昔、スーパーカーは三者連続三振に音楽シーンを切って取り、清々しい顔でマウンドを降りた。 その光景は後追いの世代のファンである自分でも、ありありと想像できる。きっとそれは歴史的な場面であったに違いない。しかし、彼らは二度とあのマウンドに立つことをしなかった。次の回に登板したのが誰であったか、僕の記憶には残っていない。これまでどれほどのバンドが試みたことかわからないが、同じ瞬間が二度となかったことは確かである。 今、Tapewormsはあのマウンドにいる。そして、僕は『スリーアウトチェンジ』の予感を肌で感じている。この投げっぷりは、ひょっとして、あるんじゃないか?なんて思ってしまう。そう期待してしまうだけの、鋭く力のあるノイズとポップネスがこのEPにはある。そしてこのEPはまだ、準備投球に過ぎない。

フィジカル音源はリーズのインディー・レーベル、Dirty Slap Recordsよりカセットでのリリースがあるので是非。

text:Reiya Suzuki

【2021年7月15日 追記】現在、本作品はbandcampから削除されており、またサブスクリプションにも存在しません。

Author

鈴木レイヤ
鈴木レイヤReiya Suzuki
愛媛県新居浜市大生院出身、タイ王国国立カセサート大学卒業。小説家。主に若者の鮮やかな夢について、魂のこもった熱い人間とその作品について書いています。東京ヤクルトスワローズのファン。