<MBV散歩vol.2>シューゲイザーについてどう思うか?

Column

前回は”シューゲイザー”というジャンル/シーンそのものについて色々語った。その文脈の中で、代表格であるMy Bloody Valentineをフィーチャーした。

“シューゲイザー=My Bloody Valentine”という図式すら成り立ってしまうほど、マイブラの存在の偉大さは桁違いだ。僕のように、シューゲイザーの入口がマイブラだった、という人も多いはずだ。

そこで、ふと思うことがある。

皆それぞれの、マイブラのファースト・インプレッションは、どうだったのだろうか?

最初から受け入れられる人と、そうでない人

なんて見出しだよ、と思うかもしれないが、実際受け入れられない人も多いのではないか?と邪推してみる。

どの曲を最初に聴くかにもよるとは思うが、おそらくは大多数が「Only Shallow」をマイブラの入口とするだろう。つまり、最初に聴く音源は『Loveless』になる。

『Loveless』を再生するとまず初めに飛び込んでくる音、それはあの”タタタタ”というドラムのカウント、そして容赦無く襲いかかってくるうねりの激しいギター。この瞬間で、受け入れられる側と、受け入れられない側に分かれる、と僕は思うのだ。

なぜなら、僕は受け入れられない側だったから。

My Bloody Valentine – Only Shallow (Official Music Video)

初めて『Loveless』を聴いた瞬間。前回も少し触れたが、僕の耳は完全に拒絶反応を起こし、マイブラの音楽を受け入れることができなかった。そもそも”これは音楽なのか?”と考え込んでしまうほどだった。

それまでは比較的ポップな音楽を好んで聴く傾向にあった自分にとっては、全ての価値観がひっくり返されるほどの深い衝撃だったと記憶している。

シューゲイザーというジャンル、とりわけマイブラの音楽はその特異性が突出している。ケヴィン・シールズが、自身の理想とする音を何が何でも具現化する、という一種の執念によって生み出された『Loveless』という名の怪物は、他の音楽のジャンルとは一線を画すものなのではないだろうか。

それゆえ、程度の差こそはあれども、マイブラの音楽をすぐには受け入れられない人が少なからずいるのでは?と思うのだ。

理解できない音楽

もちろん、マイブラの音楽をすぐに受け入れ、虜になった人もいるはずだ。それはもしかしたら、知らず知らずのうちにシューゲイザーの要素を含む音楽を聴いていたことによるのかもしれないし、聴いた年齢やタイミングの問題かもしれないし、単純に最初から好みだったのかもしれないし、理由は様々だと思う。

人間の好みというのは思っているよりもずっとバラバラだったりする。”音楽が好き”と一言で言っても、当然好きな音楽のジャンルは異なってくるわけで、中には誰かに対して”そのジャンルが好きなのは理解できない”と思ってしまう場合もあるかもしれない。

僕はかつてTwitterで”シューゲイザーは理解できない、音楽だとは思えない”というような発言をしている人を見かけたことがある。正直、最初はあまり気分がいいものではありませんでしたが、そう思う人もいて当然なのでだ(そもそも、初めは自分がそのように思っていた側の人間だった)。

しかし、自分が好きなものが絶対的だと思い込み、それを他人に押し付けようとすることで争いが起きてしまう場合がある。これほど悲しいことはない。好みの違いを認め合うのは、案外難しい。

あなたは、シューゲイザーが好きか?

シューゲイザーと一口に言っても、今となってはかなり細分化が進んでいる。この連載では便宜上シューゲイザーを”シーンでありジャンルである”という前提で色々と書いているが、今や様々な楽曲に”要素”として紛れ込み、十把一絡げにできない状況であるのも事実だ。また、シューゲイザーという言葉自体が一人歩きしている感も否めない。良くも悪くも。

↑例えば、The 1975の「Inside Your Mind」で鳴らされるギターは、本人たちの意図はともかくシューゲイザーの文脈で語れないこともない。

↑Base Ball Bearの「スローモーションをもう一度」は、その独特な浮遊感からシューゲイザー的な素養を感じたりもする。

しかし、シューゲイザーの”要素化”は、つまりシューゲイザーの間口が広がったということにも繋がる。事実、主に若い世代が中心になるが、シューゲイザーの入口がマイブラではない人も多いはずだ。マイブラが好きでなくても、他のバンドが好きだったり、日本のシューゲイザーばかり聴いている人も、少なからずいる。

この連載が、そしてこのサイトが、誰かにとってのシューゲイザーの入口になったとしたら、それ以上嬉しいことはない。そして、それぞれが、それぞれに、音楽を享受することが正当に認められる世の中を、僕は望んでいる。

さて、今回はこの辺で。

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